期限付きの出向であっても、「骨を埋める覚悟」を

社長を引き受けるのなら生半可な気持ちは禁物だということは、みなさんも十分に理解されていると思います。
これまでも組織の責任者の経験はあるから大丈夫。責任を持つことなど言われずともわかっている、という声もあるかもしれません。
しかし、社長という立場は、企業内リーダーとはまったく別のものです。
副社長や役員といったナンバー2や管理職などの企業内リーダーも、相応の責任を担ってはいます。しかし、まだ“自分より上”や“自分の後ろ”には誰かがいます。自分の手の及ばない範囲の責任、自分には手に負えない責任を、代わりに取ってくれる人がいる立場なのです。
しかし会社経営に関わるすべての責任を負う社長には、上を見ても、後ろを向いても、もう誰もいません。その「責任」の意味は大きく違ってきます。自分の判断ひとつ、決断ひとつが、従業員だけでなく会社に関わるすべての人の仕事や生活を左右する。その責任の重さゆえに「生半可」な気持ちでは務まらないのです。

会社を継続発展させ、
ステークホルダーそして社会のために
何をするのか?
何ができるのか?
このことを、ひたすら考え抜く。

これがリーダーとしての社長の仕事です。
会社と会社に関わる人へのすべての責任を双肩に担うことは、何千人に一人のカリスマ経営者ならいざ知らず、ごく普通の“凡人”には非常にハードなミッション。ましてや外部から乗り込む“よそ者”ならばなおさらでしょう。

だからこそ、たとえ「期限付きの出向」「期間の限られた委任契約」だとしても、気持ちの上では「この会社に骨を埋める」、「退路をすべて断ち切って全身全霊で責任を全うする」くらいの強靭な覚悟と決意が必要になるのです。
もしその責任を負うことに少しでも“迷い”が生じるのであれば、そのミッションは辞退するべきでしょう。

この覚悟と決意は社長に限らず、「リーダー」という役割を引き受けた人たちすべてに求められるものです。
自分の肩書の心地よさに惑わされて冷静さを失わず、浮足立たず、課せられた責任の重さを知り、覚悟を決めてそれを背負っていく。
カリスマではない普通の人、とくに“よそ者”というスタンスの人が「社長になる」「リーダーになる」とはそういうことなのです。

※「よそ者リーダーとはどんな人か」「よそ者リーダーが身につけたい3つの心構えやマネジメントとは何か」については、本連載の第1回も併せてご覧いただければと思います。

次回は、よそ者リーダーにとっての第一関門「着任あいさつ」についてお伝えします)