年間100回以上、受講者数3万人を教えてきた企業研修や講演の中から、リーダーの悩みをピックアップ。内容によっては、「本当にこんなことが起きているの?」「ウチの会社ではこんなレベルの低いことは起きていないよ」と思うこともあるかもしれません。しかし、これらはすべて、実際に現場のリーダーが抱えている問題なのです。

自分の意識を変えるのでさえ難しいのですから、部下の意識を変えさせるのはもっと難しいもの。そこで、新刊どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解から、シーン別にできるリーダーはどのような言動で接しているのかを紹介していきます。

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リーダーの不正解:モチベーションを上げようとする
リーダーの正解:モチベーションを下げないようにする

 一般社団法人日本能率協会が作成した「2019年度 新入社員意識調査報告書」によると、新入社員の「働く上での不安」の1位に「職場での人間関係」と同数で「仕事での失敗やミス」があります。

 今の時代では大きな仕事を任されて喜ぶのではなく、リスクをとりたくない部下が多いことを表しているデータです。

 データに鑑みると、モチベーションを下げないようにする、いわゆるリスクを軽減するといいように思えます。

 しかし、リスクをとらないと成長しないものです。

 大手コンサルティング会社のリーダーAさんは、部下に難解な仕事を頼むとき、「君だからできる」というような部下のプライドをくすぐる頼み方をすればいいと思っていました。

 確かに、新しいことに挑戦したい部下に、
(×)「今までうちの会社ではやっていない分野だから」
と言ったり、昇進したい部下に
(×)「この仕事をやり切れば、昇給・昇格の可能性が高まるぞ」
と頼んだりすればモチベーションも上がるでしょう。

 自信のある部下は積極的に仕事を引き受けてくれるものです。しかし、そのような部下ばかりではありません。

…>リスクを取り除く

 モチベーションを上げるのは難しいことです。部下のモチベーションを高めようとしても上がらない場合があります。

 リーダーが努力しても上げることができない場合は、少し乱暴な言い方になるかもしれませんが、そのタイプの部下に時間を割くのはもったいないです。

 ですから、「モチベーションを下げない」状態にすればいい。リスクをできる限り取り除くのがポイントです。

 たとえば、今まで取り組んだことのない新しい仕事をするときは、「期日通りにできるだろうか」「自分が担当してもクオリティは維持できるだろうか」「相手に納得してもらえるようなアウトプットが出せるだろうか」など、誰しも多少の不安を抱えるでしょう。また、このタイプの部下は責任を取らされたくないと思っています。

 ゴールまでの一連の仕事を漠然としてとらえると、難しく感じるかもしれません。

 そこで、タスクを1つ1つ分解していき、
(○)「不安に感じるのはどの部分?」
 と質問し、部下が不安と感じるタスクを説明します。

 そのうえで、「やってみてうまくいかなければ、フォローするから安心して」と伝えます。

 リスクを恐れる部下のモチベーションを上げるのは難しいものです。そこで、無理にモチベーションを上げるのではなく、下げないようにする。そのためには、「ここだけ注意すれば大丈夫」と不安を取りのぞけばいいのです。

【ポイント】
モチベーションを上げるのではなく、下げないのがリーダーの仕事。リーダーが部下の後ろ盾になれば、部下も迷わず取り組める