ある日突然、異動や転職などでリーダーを任された。
配属先は慣れ親しんだ場所ではなく、
すでに人間関係や風土、文化ができ上がっている
“アウェー”のコミュニティ(会社組織)。
右も左も分からない中、「外から来た“よそ者”」の立場で、
いきなりリーダーを任されるケースも少なくありません。
また、多数のエンジニアを率いる非エンジニアのリーダーなど、
自分の専門外の領域でチームをまとめなければならない
「門外漢のリーダー」も増えています。
今の時代、「よそ者リーダー」がリーダーの大半である
といっても過言ではありません。しかし、「よそ者リーダー」が
どのようにチームを率いるべきかについては、OJT(現場で
やりながら身につける)しかないというのが現状でしょう。
そこで、新規事業立上げ、企業再生、事業承継の中継ぎetc.
10社の経営に関わった『「よそ者リーダー」の教科書』の
著者・吉野哲氏が「よそ者」こそ身につけたい
マネジメントや組織運営のコツについて伝授します。
今回は、「よそ者リーダー」とはどんな人たちのことか。
そして「よそ者リーダー」が身につけたい3つの心構えとマネジメントについて
お伝えします。
(構成/柳沢敬法、ダイヤモンド社・和田史子)
ある日突然、新天地で
リーダーを命じられるケースが急増
ある日突然、組織のトップになる。
リーダーを任される──。
ビジネスの世界ではこうした事態がしばしば起こります。
「○○会社から、事業再建のためのトップとして、
あなたにオファーが来ています」
「事業部長として、買収した関連会社への出向を命ずる」
「次の異動では、○○支社の支社長を引き受けてくれないか」
「息子が成長するまで、あなたに会社の経営を託したい」
その事情もさまざまで、慣れ親しんだ組織内での指名や昇格、
抜擢もあれば、中には、
・転職やヘッドハンティングなどで、他の会社へ招聘
・子会社・関連会社への出向や転籍
・支社・支店への転勤
といった、すでに人間関係や風土、文化ができ上がっている
“アウェー”のコミュニティ(会社組織)に送り込まれ、
そこで「外から来た“よそ者”」の立場で、
いきなりリーダーを任されるケースも少なくありません。
事業の再編やM&Aも増える今、
こうした形でのリーダー就任が増えています。
また、出向や転勤だけでなく、
「人事異動で専門外のセクション長になった」
「社内の新規事業プロジェクトを取りまとめることになった」
「新規店舗のリーダーとして、アルバイトさんやパートさんを束ねることに」
「男性比率が圧倒的に高い職場に女性リーダーとして着任した」
といった、同じ組織内であっても
“よそ者”感を覚えるケースも増えています。
リーダーに指名される。社長を任される。
それ自体はビジネスパーソンにとって非常に魅力的な出来事でしょう。
特にベンチャー志向の強い人や、また自分の経営手腕への絶対的な自信を持つ人、真のカリスマ的リーダーや自称カリスマリーダーにとっては、絶好のチャンスと考え、ふたつ返事で引き受けることもあるでしょう。しかし、すべてのビジネスパーソンがそうかと問われたら、どうでしょうか。
誰もがみな、起業を目指しているわけでも、リーダーとして天賦の才を与えられているわけでも、MBAを取得し経営者になることを望んでいるわけでもありません。
むしろ圧倒的多数は、カリスマ性やMBAとは無縁の、「普通の人」なのです。
そのような“凡人ビジネスパーソン”にとって、「社長をやってくれ」「リーダーとして組織をまとめてくれ」という突然のミッションは、実は期待や喜び以上に不安や戸惑い、プレッシャーに直面させられる、ある意味「緊急事態」です。