なぜバイデン大統領は就任後初の
首脳会談に日本を選んだのか?

――4月16日、バイデン米大統領が、今年1月の政権発足後初めての外国首脳として菅義偉首相をホワイトハウスに招き、対面形式による日米首脳会談が開催されました。米国で新政権発足後に「一番乗り」して日米首脳会談を行ったのは、1989年のブッシュ(父)大統領と竹下登首相以来とのことです。最初に日本を選んだ理由は、米国の意識がアジアに向いてきたということでしょうか?

 米国内では6年以内に中国が台湾へ軍事攻撃をするという見方もある。世界地図を逆さにすればわかりやすいが、中国が太平洋へ出るルートを、日本と台湾が遮っている。

 これまで米国は、太平洋の安全保障は米国が担うと言ってきたが、そこまでの力はなくなってしまった。そのためバイデン大統領は、日本に相当の役割を期待している。

――日米首脳会談の前、田原さんは菅首相に会っていますが、どのような話をしたのでしょうか?

 仮に台湾有事が起こると、米国は台湾を守るために中国と戦うことになるだろう。そして日米同盟を組んでいるのだから、日本も米国と共に中国と戦うことになる。しかしこうした事態は米国も日本も中国も望んではいない。

 そのような事態を招かないためにはどうすればいいか?経済含め中国との関係が深い日本はどのような役割を担ってくれるのか?中国とどのようなコミュニケーションができるのか?米国はそこをとても期待している。そのために最初の首脳会議に日本を選んだのだろう。そこをしっかり意識すべきだ。こういった話をした。その後の会談ではほぼその通りの話だった。

 米国だけでなく、ヨーロッパ各国も中国への警戒を強めている。NATO(北大西洋条約機構)の仮想敵国は以前はソ連だったが、今はソ連以上に中国を脅威とみている。日米と中国が互いにけん制するインド太平洋に、イギリスやフランス、ドイツなどヨーロッパ各国の軍隊が艦艇を派遣している。3月には、QUAD(日本・米国・インド・オーストラリアの4カ国戦略対話)首脳会談も行われた。各国とも、中国とどのように関係していくかを迷っているのだ。