「コロナ禍」という長いトンネルの出口が見えず、新型コロナウイルスの全国的な感染は障がい者の就労にも大きな影響を及ぼしている。そうしたなか、障がい者雇用支援事業を手がけるパーソルチャレンジ株式会社(本社:東京都港区)が、今年4月に高知県の四万十町に「パーソルチャレンジ 高知四万十オフィス」を開所した。地域在住の障がい者が働くオフィスを地方に開いた理由を、事業所の責任者である野原斗夢氏(パーソルチャレンジ株式会社 エンプロイメント・イノベーション本部 Career&PRO受託事業部)に聞いた。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)
*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「ダイバーシティ」が導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。
地方に在住している障がい者が働けるオフィス
さまざまな企業が林立する大都市圏では、その求人数に比例して障がい者の就労機会も多いが、地方在住の障がい者にとっては、コロナ禍によるテレワーク普及が追い風になったものの、働く場所を容易に見つけられない傾向がある*1。そうしたなかで、パーソルチャレンジが高知県の四万十町にオフィスを開所したきっかけは何か?
*1 大都市圏と地方では障がい者求人の「充足率」に開きがある。採用における充足率は、企業が求人を出したときにすべての求人で採用ができれば100%、半分しか採用ができなければ50%という数値になる。
野原 当社は、障がい者の人材紹介事業を営むなかで、地方在住の登録者(障がい者)に仕事を紹介することが難しい認識を以前から持っていました。そのことをいっそう明確な課題として捉えた機会は、2018年に厚労省から受託した「障害者のサテライトオフィス勤務導入推進事業」でした。この事業を通して、さまざまな地域の自治体、支援団体にアプローチするなかで、地方での企業や求人数に加え、地理的な条件で就業機会が得られていない障がい者が数多くいらっしゃることを実感したのです。
コロナ禍以前の2018年に行政(厚生労働省)が主導した「障害者のサテライトオフィス勤務導入推進事業」は、“障がい者の勤務場所としてのサテライトオフィス”の在り方を検証し、そのマニュアル化を図ったものだ。テレワークのひとつであるサテライトオフィスでの就労は、大都市圏の企業に出勤できない障がい者に就労環境の選択肢を広げていく。
野原 同事業を進めるなかで、四万十町の関係者や支援機関の方々と知り合う機会がありました。もともと、四万十町では地元の農家の作業を障がい者が担うなど、農家や地域住民には「障がい者が働くことへの理解」が進んでおり、地域の支援機関も障がい者の就業機会の創出や活躍を強く支援しているように思えました。そうした地域の理解や支援機関のサポートは、今回の私たちの事業進出においても心強く、地域在住の障がい者を現地で雇用し、本社や他の拠点と同じ業務を担う本格的な「障害者雇用拠点(支社)」として、今回のオフィスを開設することになりました。