もし、会社が仕事の成果で正当に人を評価することを明確にしたいのならば、会社の経営理念や行動規範の中で、自社の価値観または企業文化として、上記のようなずるい方法を良しとしないということを明示し、人事考課研修などにも組み込んで徹底的に教育する以外に制御の方法はない。それをしない組織は歴史の教える通り、佞臣(ねいしん)によってむしばまれるのである。

 今までこうした技術を(自覚的、無自覚的に)駆使し、大して仕事ができないのに、あなたをあっさりと追い越していった同僚や後輩がきっといるだろう。あなたは自身の「コミュニケーション能力」のなさや世の不条理を嘆いているかもしれないが、それはもったいないことである。これは仕事の能力差ではなく、関係性構築の技術の問題にすぎない。

 そうした人たちがどのように技術を駆使しているかを客観視し、「ああ、またやってる、やってる」と思えば、案外余計な心理的ストレスも感じなくなるものである。また、あなた自身が同じように振る舞えないとしても、上司に対して、そういうアプローチがあり得るのだと知っているだけで、心の余裕ができるはずだ。

 生徒、友人、親子の関係に甘んじているだけの人は、個人の能力自体は決して磨かれていない。あなたはこつこつと自分の仕事の能力を磨きながら、そうした関係性に依存しないこれからの副業時代に羽ばたく夢を持っていればいいのである。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)