ソフトのデザインとハードのデザインを考える

 まずは、次のような疑問からスタートしてNOIをどう伸ばせる可能性があるのか、アイデアを書き出してみよう。

「ソフトのデザイン」
・そもそもワンルームだけが不動産投資の王道だろうか?
・用途は住宅以外にないのだろうか?
・地下の利用や屋上の利用などはできないのだろうか?
・建築設備や内外装のデザインでプレミアムレント(付加価値のついた賃料)を実現できないだろうか?

「ハードのデザイン」
・建築計画の限界は本当に地上7階建なのだろうか?
・構造形式は、建設コストが安い木造か、短期で建つ鉄骨造か、または鉄筋コンクリート造が適しているのだろうか? コストが合えば新築鉄筋コンクリート造が圧倒的有利であることは既出の通りなのだが
・縦にあまりに細長い建物だと、杭にコストがかかりすぎないだろうか? 適度な高さとは? そして地下を作るほうがよいのだろうか?

 まずは、何をおいても最重要となる高い実質収益(NOI)を創造するところから始めてみよう。この神楽坂の立地で、どのようなユーザー像がありえるのかを自由に発想してみるところからスタートする。これらの可能性のタネから生まれるデザインは次のようになるだろう。

・敷地が狭く、どうせ1フロアに1住居しか造れないのであれば、いっそのこと、1LDKやコンパクトな2LDKのような敷地をめいっぱい使ったカップルや家族向けの住宅にしてみる可能性が考えられる。1フロア1ファミリーとなり、専有しているプレミア感覚も増す。そしてファミリーは比較的長い期間住んでくれるからだ。

上田真路(うえた・まさみち)
建築家・不動産投資家
KUROFUNE Design Holdings Inc. 代表取締役CEO
ハーバード大学デザイン大学院で不動産投資と建築デザインを学び、投資理論とデザインの力を融合させたユニークな不動産投資を行う。
鹿島建設入社4年目に不動産投資を開始。数々の不動産投資セミナーに足を運び、不動産関連書籍を数十冊読破。そんな中で出会ったメガ大家集団をメンターに持ち、指導を仰ぎながら不動産投資をスタートする。最初に行った東京・神楽坂での新築マンション開発では超狭小地に苦労し、辛酸を舐めつつも独自の不動産投資スタイルを確立する。現在5棟の超優良物件を保有。保有物件の中では投資額が4年間のうちに26倍になったものもある。
1982年高知県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院卒業後に鹿島建設入社。
大学院卒業時にリゾートホテル開発プロジェクトにより早稲田大学小野梓芸術賞を受賞。
同社では国内外で建築設計や大規模な都市開発業務に従事。鹿島建設社長賞、グッドデザイン賞、SDレビュー賞などを受賞。2016年、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)へフルブライト留学。2018年、GSD不動産デザイン学科を卒業、外資系不動産ファンドでの投資業務を経験した後、KUROFUNE Design Holdings Inc.(デザイン事務所兼不動産ファンド会社)を創業し独立。現在はハーバード学生寮生活で得た原体験をもとに、住まいと学びを融合させた国際学生寮「U Share」を開発運営する。また、慶應義塾大学SFC特任講師、早稲田大学特任講師として「不動産デザイン」について教えている。初の著書に『ハーバード式不動産投資術 資産26倍を可能にする世界最高峰のノウハウ』(ダイヤモンド社)がある。