研究を発表した米コネチカット州立クイニピアック大学によると、トイレと同じ空間にある洗面所に歯ブラシを置いた場合、糞便に見られる細菌が付いていることが分かりました。細菌が歯ブラシに付着する可能性は60%とのこと。さらに9人が使用する共同バスルームの場合は、他人の糞便の細菌が付着する可能性は80%にまでなるというのです。

 この論文では、原因は水洗トイレを流したことによるエアロゾル(空気中を漂う微粒子)感染だと推測しています。この研究の段階では、「歯ブラシがトイレと同じ空間にある場合は、歯ブラシをバスルームの外に置くこと」を推奨していました。

 そしてこの発表の後、ワンルームマンションやビジネスホテルでは、歯ブラシをバスルーム以外で保管する人が増えたということです。

2021年になって
安心できる論文が発表される

 しかし今年になって、やっと安心できる論文が発表されました。米イリノイ州にある、ノーベル賞受賞者を多数輩出している名門ノースウェスタン大学が、歯ブラシに付着している細菌叢(さいきんそう、細菌の集団)を詳しく調べるためにDNA解析を行ったのです。

 この研究で、歯ブラシに付着している細菌叢はヒトの口腔内や皮膚によく見られるものと一致することが分かりました。「歯ブラシに付着している菌の大多数は口腔内に由来する菌」であることから、バスルームに置いてある歯ブラシにおいても「細菌のことを特に気にする必要はない」と結論付けています。

 つまり、口腔内にも糞便と同じ細菌が存在するため、歯ブラシをバスルームに置くかにかかわらず、付着する細菌叢は同じというわけです。これは歯ブラシを扉の閉まったキャビネットの中に置こうと出しっ放しにしようと、特に差はありません。

 さらにこの研究では、デンタルフロスやマウスウォッシュを使って口の中をキレイにしている人はわずかですが、歯ブラシに付着している細菌の数が少ないことも判明しました。

 ただし、口の中の環境には個人差があるので、「歯科医師が勧めた場合は、その指示にしたがってほしい」ともコメントしています。