ある日突然、異動や転職などでリーダーを任された。
配属先は慣れ親しんだ場所ではなく、
すでに人間関係や風土、文化ができ上がっている
“アウェー”のコミュニティ(会社組織)。
右も左も分からない中、
「外から来た“よそ者”」の立場で、
いきなりリーダーを任されるケースも
少なくありません。
また、多数のエンジニアを率いる非エンジニアの
リーダーなど、自分の専門外の領域でチームを
まとめなければならない
「門外漢のリーダー」も増えています。
今の時代、「よそ者リーダー」がリーダーの
大半であるといっても過言ではありません。
そこで、新規事業立上げ、企業再生、事業承継の
中継ぎetc.10社の経営に関わった
『「よそ者リーダー」の教科書』の著者・吉野哲氏が
「よそ者」こそ身につけたい
マネジメントや組織運営のコツについて伝授します。
今回は、リーダーが率先して示すべき「時間意識」に
ついてお伝えします。
(構成/柳沢敬法、ダイヤモンド社・和田史子)

『「よそ者リーダー」の教科書』著者の吉野哲氏によるリーダーが率先して示すべき「時間意識」とはPhoto: Adobe Stock

リーダーは率先して
「定時で帰る」

社長は、定時になったら“さっさと”帰るべき。

これは私の持論であり、自分にも課しているルールです。

働き方改革が叫ばれている昨今、多くの企業が残業削減や残業ゼロを目指すなど業務改善への取り組みを始めています。いつまでも会社に残ってダラダラ仕事をするのは、時代の流れに大きく逆行する行為でしかありません。

部下が「定時で帰ります」と言えないのは「上司が定時で帰らない」から。

個人主義的な考え方が広がり、上司は上司、自分は自分という発想でマイペースに働く人も増えてはいますが、やはり「役職が上の人間が残っているのに、先に退社するのは気が引ける」という思いに縛られる人も少なくありません。

いくら言葉で「残業削減」を呼びかけても、組織として「上が帰るまでは、下も帰りにくい」空気が変わらなければ業務改善はそう簡単には進みません。

だからこそ、まず社長自らが率先して“さっさと”定時に帰る。
「社長はこういう時間管理をする人なんだ」
「ウチの会社の仕事に対するスタンスはこうなんだ」
という認識を浸透させることが、全社的な働き方を変える第一歩になるのです。

特に、外部からやって来た“よそ者社長”の場合は、着任初日が重要です。

周囲は新しい社長の働き方や仕事へのスタンスを知りたがっています。

着任早々から、夜遅くまでパソコンや書類とにらめっこして居残られたら、従業員は、
「新しい社長は残業とか気にしない人なのか?」
「もしかして『会社にいることが仕事』っていうタイプ?」
「毎日こんなに遅くまでいられたら、正直やりにくいよな」
と、“先が思いやられる気分”になってしまうでしょう。

「初日だからやる気を見せたい」「すぐにでも仕事に取りかかりたい」とばかりにがんばってしまう気持ちもわかりますが、それは逆効果。

初日こそ、潔くサッと帰る姿を見せるほうが今後のためになります。

終業時間を過ぎても社長が社内をうろついているような会社では、従業員のストレスも増すばかり。新しい社長が残業ばかりしていたら、「ウチの会社は社長までがあんなに残業しないと立ち行かなくなるくらい、危機的状況なのでは……」といった、あらぬ不安や誤解を生む恐れもあります。

もちろん、会社としての緊急対応が必要な場合や、一気に改革を進める局面などでは、時間に関係なく動くべきです。

しかし、スマホやタブレットがある今は、どこにいてもすぐに連絡がつく時代。よほどの緊急事態でない限り電話やメールで対応できるのですから、経営トップこそ、定時退社を徹底するべきなのです。

社長やリーダーの立場にある者の行動や意識は、従業員の働き方に大きな影響を与えることを認識しておきましょう。

※「よそ者リーダーとはどんな人か」「よそ者リーダーが身につけたい3つの心構えやマネジメントとは何か」については、本連載の初回記事も併せてご覧いただければと思います。

次回は、組織の実態が一瞬で把握できる「ある場所」についてお伝えします)