伊勢津ドライの店舗今年3月29日に民事再生法の適用申請を行った伊勢津ドライの店舗 写真提供:帝国データバンク

3度目の緊急事態宣言が延長され、新型コロナによる経済被害は大きくなるばかりだ。1度目の宣言発出からすでに1年以上がたち、飲食店やホテル、旅行業者などコロナ禍での苦境が伝えられる。その一方で、日々の生活に密着している業種にもかかわらず、あまりその実態が表に出ていこない業種もある。そのひとつがクリーニング業者だ。同業者間競争や家庭用洗濯の技術革新、消費者の節約志向など、以前から多くの問題を抱えていたところに直撃したコロナ禍。今年に入り大阪で発生した2社の倒産がクリーニング業界の実情を端的に表していた。(帝国データバンク情報部 白浜雄介)

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 大阪府交野市に本社を置く株式会社伊勢津ドライは、昭和33年創業で60年以上の業歴を誇る老舗クリーニング店だ。

 三重県の津市出身の創業者がクリーニング店での経験を生かして独立開業し、昭和50年に法人化。その後、高度経済成長期とともに事業を拡大し、1985年には直営店・取次店合計で120店舗を展開。90年以降は大阪、兵庫、奈良の計5カ所で工場設備を新設し、大阪と京都をつなぐ京阪沿線では最大手に位置付けられ、関西でも名の知れたクリーニング業者に成長を遂げた。

 その後も成長を続けるなかで、同社が他社と差別化できるポイントは二つあった。