企業が裁判所に自己破産を申し立てる際に作成する「破産申立書」には、社長による「陳述書」の添付が求められる。倒産に至った経緯について経営者自ら振り返り、代理人弁護士の助言を得て通常A4用紙2~3枚程度にまとめるものだが、時に思わぬドラマチックなストーリーに出合うことがある。(東京経済東京支社情報部 井出豪彦)

異例の大長編となった
社長の破産陳述書

写真:綜合プランニングのH社長が提出した陳述書綜合プランニングのH社長が提出した陳述書 拡大画像表示

 群馬県前橋市に本社のある不動産会社の綜合プランニングは昨年12月25日に前橋地裁に自己破産を申し立て、翌月12日に破産手続き開始決定を受けた。負債は40億円という県内有数の大型倒産となったが、さらに驚くことに申立書に添付されたH社長の陳述書が異例の11ページにもわたる「大長編」だった。しかも実に読ませる内容だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大にもかかわらず、公的支援の充実と金融機関の融資姿勢緩和でかえって倒産が減っているのは周知の通り。それにもかかわらず倒産した会社の内部ではいったい何が起きたのか、陳述書を引用しながら解説したい(引用の一部は読みやすいように筆者が手を入れた)。

 綜合プランニングは2007年10月に設立された。H社長は地元・前橋市生まれで、中央大学商学部を卒業後、1982年に大生相互銀行(現・東和銀行)に入行し、本店営業部での勤務や群馬経済同友会事務局への出向などを経て独立した。

 不動産賃貸・仲介収入を柱としていたが、単なる不動産業者ではなく「群馬を元気に」とのコンセプトで地域活性化につながる幅広い事業展開を図り、カフェやエステサロンなどの店舗運営事業、スポーツ情報誌などの出版事業、事業承継などの経営コンサルティング事業、ベトナムやモンゴルからの留学生をターゲットとした日本語学校などの教育事業と多角化を進めた。

 17年10月には、上毛新聞紙上で同紙の専務(当時)とH社長の対談広告が全面カラーで掲載され「地域ビジネスの複合体(コングロマリット)の形成に成功した」と自負していた。実際、17年3月期の売上高は21億円へと躍進し、経営は表向き順風満帆。有力企業の仲間入りを果たしていた。

 ところが、実態はそうでもなかった。

 陳述書によれば「今考えれば、本当にばかなことをしたと思っておりますが、2017年か18年頃から私は3名の知人から法外な金利で金員を借り入れ、その知人らに対し1カ月に1700万円以上の金利の支払いを行っていました。この頃、負債金額が増加し、それに伴い返済に追われるようになり始めたからです。このような法外な金員を借り入れた際は、他から融資を受ける予定があったり、日本語学校の関係で大きな収入を得る見込みがあったりしたため困ったことにはならないだろうと甘く考えていたのです」。

 不動産の相次ぐ取得で事業規模を図ったところ、想定以上に資金繰りが厳しくなったというわけだ。