深刻化する半導体不足を受け、TSMCに対する投資家の注目度は右肩上がりだ。株価は過去1年間で倍に膨らみ、時価総額は60兆円を突破。トヨタ自動車にほぼダブルスコアという水準だ。特集『世界を動かすTSMC』(全5回)の#3では、このTSMC株の先行きを占う上での、二つの鍵を解説する。(台湾「財訊」劉志明、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
時価総額はトヨタのほぼ倍!
TSMC株はどこまで伸びるか
半導体受託製造(ファウンドリー)の世界最大手、台湾TSMC(台湾積体電路製造)の時価総額は15.6兆台湾ドル、日本円にして61.8兆円に達している(6月11日の終値ベース)。半導体企業としては世界最大であり、あらゆる上場企業の中でも米テスラや中国アリババグループなどと並んでトップ10内外に食い込んでいる。日本企業と比べれば、トヨタ自動車のほぼ倍、ソニーグループの4.5倍という規模だ。
このTSMCの株価は、過去1年余りで大きく伸長した。6月11日の終値は602台湾ドル(約2387円)で、新型コロナウイルスの感染拡大第1波のさなかだった2020年3月中旬からほぼ倍に膨らんでいる。
この伸長局面で、投資家が冷や汗をかかされる一幕があった。米インテルが3月下旬、新CEO(最高経営責任者)のパット・ゲルシンガー氏の下、200億ドル(約2.2兆円)を投じて米国に工場を新設し、半導体受託製造業務を強化すると発表したときだ。この発表の翌日、TSMCの株価は3%下落した。
その後、株価は発表前の水準を取り戻したのだが、投資家は改めて考えたことだろう。果たしてこのインテルの猛攻は、TSMCを現在の地位から引きずり下ろすだろうか?圧倒的な高みにあるTSMCの株価は、今後どうなるのだろうか?TSMC株の動向を占う上では、二つの鍵がある。