需給が逼迫する中で市場活況が続く半導体業界は、国内外企業で株価の最高値が相次ぐなど好調だ。特集『決算直前 米国&日本 最強の投資術』(全13回)の#3では、同業界が今後も有望といえる理由について分析した。(三菱UFJモルガン・スタンレー証券参与チーフ投資ストラテジスト 藤戸則弘)
イノベーションが“国策化”の大投資策
注目すべき半導体業界への巨額資金投入
バイデン米大統領の大投資策が先日、ついに全貌を現した。総額は2兆2500億ドルに達し、以下の4項目が主柱となっている。(1)運輸関連等インフラ投資・約6200億ドル、(2)デジタルインフラ投資・約6500億ドル、(3)米製造業の競争力強化・約5800億ドル、(4)高齢者、障害者介護・約4000億ドルで、向こう2期8年間で達成すると表明した。
従来、インフラ投資といえば、道路、橋梁、港湾、学校、病院、住宅等の伝統的投資を意味してきた。しかし、今回のバイデン案ではこれらが全体に占める割合は約4分の1にすぎない。
今回の最大のポイントは、デジタルインフラ投資、イノベーション対応促進に、約半分を投入することだ。細目を見ると、高速ブロードバンド、スマートグリッド(電力供給を最適化する送電網)、EV(電気自動車)化促進、半導体の米国内製造促進・サプライチェーンの強化、AI・新素材・バイオ医薬品への対応強化、研究開発促進といった項目が盛り込まれていること。明らかに、イノベーション対応を国家が促進・援助する方針が見て取れる。
クリントン政権当時には、「情報スーパーハイウェイ構想」を掲げ、これが現在に至る急速なインターネット化の進展、デジタルエコノミー化を促進した実績がある。バイデン投資策も、いわばイノベーション対応が国策と化した感がある。
特に注目すべきは、半導体の国内製造促進やサプライチェーンの強化が喫緊の課題となっている中、それらの対策として約500億ドルの資金が投入されることだ。
次ページ以降、このバイデン投資策に加え、グローバルな半導体市場の活況を後押しした二つのポイントを詳述。それらが国内外の半導体関連企業にどのような影響を及ぼしているのか、10社超の具体的な企業名に言及しながら解説していく。