アップルが自動車産業に参入すれば、スマートフォン同様に車も半導体の固まりのようなものになる。現状でもすでに、車載半導体は世界的に需給が逼迫した状態で、当面は半導体業界にとってウハウハのもうけ時になりそうだ。特集『アップル 車の破壊者』(全5回)の#3では、アップル参入でさらに笑いが止まらない半導体関連23社を一挙公開する。(台湾「財訊」 尚 清林、翻訳・再編集=ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
テスラにアップル、グーグルも
EVは株式市場で最熱のテーマ
電気自動車(EV)が今の株式市場で最もホットなテーマであることは疑いようがない。2020年12月に米テスラがS&P総合500種指数に組み入れられて以降、EV産業そのものがある種の承認を受けたように、華々しい状況にある。
21年に就任したバイデン米大統領はEV産業を全面的に支援しており、米国全土にEVの充電ステーションを50万カ所新設する方針を示している。またバイデン氏がエネルギー長官に起用したジェニファー・グランホルム氏は、ミシガン州知事時代にEVと電池産業を支援したことで知られている。
こういった動きの中で伝えられる米アップルの自動車開発。自動運転EVとして、当初の計画より早い時期にお目見えする可能性があるとも観測されている。このアップルの動きが、EVテーマ株を一層盛り上げている。しかもアップル以外にも米国のハイテクガリバーの間では、グーグル(アルファベット)とアマゾン・ドット・コムもEV開発に乗り出している。既存の自動車メーカーも米エヌビディアと協業で、自動車関連システムを開発している。
新興、既存プレーヤーを交えたEV開発競争によって、ただでさえ需給が逼迫していた半導体の供給はさらにタイトになり、かつてないレベルの半導体不足となっている。
台湾の調査会社、拓ボク産業研究院の推計では、21年の自動車半導体市場の成長率は前年比12.5%に達し、市場規模は210億ドルを突破する見込みだ。また英調査会社IHSマークイットのリポートは、自動車用半導体の需要が大幅に増えることにより、納期は数カ月単位で長期化する見通しだとしている。
EVやハイブリッドカーには基本的に、ADAS(先進運転支援システム)やHUD(ヘッドアップディスプレー)、デジタルメーター、情報システムなどが組み込まれており、いずれも半導体が不可欠だ。これまでスマートフォンやパソコンが中心だった半導体の需要は、次世代移動通信システム5Gの需要によってまず供給不足に陥り、さらに今、車載半導体の需要が加わって需給逼迫に拍車が掛かっている。業界では、21年の上半期いっぱい、あらゆる車載半導体の供給不足が続くと見込まれている。
ではこの「半導体飢饉」の中で、大きくもうけるのは一体どこなのか?