半導体受託生産の世界最大手、台湾TSMC(台湾積体電路製造)が、社運を懸けて挑む「4年戦争」。装置や材料のサプライヤーも、戦いと無縁ではいられない。それどころか戦争特需よろしく、TSMCからの需要で稼ぎ時になる可能性が高い。特集『世界を動かすTSMC』(全5回)の#2では、TSMCが仕掛ける半導体4年戦争で「特需」にありつきそうな日本企業18社を実名で全公開する(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
TSMCは700社超の取引先を
厳しく選別している
TSMCが新工場を建設する米アリゾナ州フェニックスは、砂漠地帯のど真ん中に位置する工業都市だ。新工場の予定地も辛うじて砂漠ではないものの、幹線道路が延びるだけの荒れ野である。
この荒れ野に巨大半導体工場を迎えるに当たって、地元自治体は必要なインフラを整備することをTSMCに約束している。内容は上水道、下水道、道路、外灯などで、地元自治体側の財政負担は最大で2.05億ドル(約224億円)に上ると試算されている。企業一社に対して地域が提供する金額としては、決して小さくない。
だがこれを地元議会が承認しているのは、負担を上回って余りある経済的な恩恵が見込まれるからである。2024年に工場が稼働すれば、1900人分のフルタイム雇用を生み出し、その後20年間の経済効果は382億ドル(約4.2兆円)に達すると推計されている。
そしてTSMCの工場建設が経済効果をもたらすのは、地元地域だけではない。半導体関連の設備や材料を供給するサプライヤーも、TSMCの4年戦争(本特集#1『TSMCの熊本工場は「検討」に終わる!“半導体4年戦争”勝利が最優先』参照)の「特需」にあやかることになる。今の焦点は、TSMCがどのサプライヤーをこの戦争の「戦友」として重用するかだ。
TSMCのサプライヤーは、半導体製造装置から化学材料、プラント建設、ITシステムまで幅広く、その総数は700社を超える。日本企業も多数含まれている。これらの取引先を、TSMCは常日頃から厳しく選別している。