世界を動かすtsmc#5Photo:Intel

かつて半導体産業に君臨した米インテル。それが株式市場からの評価では今や、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)に大きく水をあけられている。そのインテルが新しい経営トップの下で打ち出した、半導体製造への巨額投資戦略。これはTSMCに対する事実上の宣戦布告だ。一方で、インテルはTSMCの顧客でもある。半導体の前王者は、TSMCの敵なのか、味方なのか?特集『世界を動かすTSMC』(全5回)の最終回では、インテルの逆襲をレポートする。(台湾「財訊」林宗輝、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

TSMCに宣戦布告
インテル新CEOの大戦略

 米インテルのパット・ゲルシンガーCEO(最高経営責任者)は、インテルの黄金時代に技術トップを務めた人物だ。その後は米VMウエアのCEOを務めていたが、「帝国の復興」を託されて今年2月に古巣に舞い戻った。このゲルシンガーCEOが3月、高らかに発表したのが「ものづくり強化」の戦略だ。

 200億ドル(約2.2兆円)を投じて米アリゾナ州に工場を新設し、顧客企業向けに半導体を受託製造するファウンドリー事業にも参入する。戦略の名前は「IDM2.0」。IDMとは、設計から製造まで垂直統合型で半導体を手掛けるビジネスモデルを指す。インテルはこれまでも半導体の設計から製造まで自社で一気通貫で手掛けてきたが、これをさらに進歩させようというのが今回の戦略だ。

 この発表に資本市場も反応した。発表後、インテルの株価は約6%上昇したが、TSMCは3%下落した。ファウンドリーはまさしく、TSMCがほしいままにしている市場。それが顧客の一社であるインテルがライバルに転じると宣言したことで、悪材料視されたのだ。

 TSMCを脅かすインテルのIDM2.0とは、一体どのような戦略なのか?