研究の成果で見えた、「育て上手」なMMリーダーの特徴

永田 今年度(2021年度)から「MMリーダー研修」が改定されるそうですね。こちらは、いわゆるOJTメンター研修のようですが、改定された理由などを教えていただけますか?

三井物産人材開発株式会社・人材開発部長の佐々木孝仁さん「3年目研修」にとても強い手応えを感じているという、三井物産人材開発株式会社・人材開発部長の佐々木孝仁さん

佐々木 三井物産には「現場での仕事が人材育成の主軸である」という考え方が根づいています。そうした意味で、新卒社員の現場での学びを、MMリーダーと呼ばれる先輩社員が1年間伴走しつつ支援するというかたちは極めて重要です。他方、昨年(2020年)5月、本社が新社屋に移転したことをきっかけに、アクティビティ・ベースド・ワーキング*1 やフリーアドレスなどの“新しい働き方”が取り入れられるようになりました。また、コロナ禍によって広まったリモートワークも、もはやあたりまえになりつつあります。このような変化は、これまでのようにMMリーダーと新人が隣席に座り、何かあったらいつでも声をかけ合えるような状態や、これまで当然にオフィスで行われていた「面やコミュニティ」で育てる、ということに影響を及ぼしています。そこで、環境変化に応じて新人育成の仕組みをアップデートすべきなのではないか、という問題意識が生まれました。その結果、MMリーダー制度のあり方や研修内容を進化させることになったのです。

*1 従業員が自分の業務内容に合わせて、オフィス内に限らずに、自宅や近所のカフェなど、場所と時間に縛られないかたちで就労すること。ABWとも表記される。

永田 具体的に、どのようになったのでしょう?

佐々木 これまではMMリーダーに対して説明会を行い、あとはそれぞれの現場次第という傾向が強かったのです。1年間の任期の途中で行う、MMリーダー向けの研修もありますが、いまや、リモートワークの状況で入社した新人を “新しい働き方”のなかで育てなければなりません。その前提をMMリーダーにしっかり理解してもらい、そのための技を早い段階で学んでもらいたいと思っています。そこで、新人の配属後すぐにMMリーダーたちに、必要な知識や育成スキルを学ぶセッションを導入しました。また、数カ月経過後には、部署内でのMMリーダー同士が、部署内の新人の育成状況を振り返り、面で育てる意識を持つ場を設けています。それだけでなく、MMリーダーがサーベイを通じて自身の育成方法を振り返る既存の研修をブラッシュアップするとともに、MMリーダーと新卒社員の1on1を取り入れ、2週間に1回のルーティンとしました。MMリーダー制度をアップデートすることで、育成者をしっかり育てていくという変化を生み出そうと思っています。

永田 育成スキルとは、育成の“型”のようなことでしょうか?

佐々木 そうですね。内部知見だけでなく、外部知見も踏まえて体系化した「新人育成の原則」をMMリーダーにはしっかり学んでもらいます。やはりここでも経験学習理論が重要になってきますね。1on1を通して、新人が経験を振り返り、言語化しながら、それを次の挑戦に生かしていくという経験学習サイクルを支援していく必要がありますから*2

*2 三井物産人材開発では、MMリーダーと新人の1on1ミーティングにおけるツールの1つとして、「経験学習シート」を使用している。シートを用いて、経験学習サイクルの流れに沿いながら経験を整理していく。

永田 新たなMMリーダー研修には、どのような効果を期待されていますか?

佐々木 まずは、新しい働き方においても新人が取り残されることなく、成長の軌道に乗って自信を持てるようになってほしいですね。さらに、MMリーダー自身には、新人の成長を支援することで人材育成力に磨きをかけ、リーダーシップ発揮に向けた成長を遂げてほしいと思っています。

永田 MMリーダー研修も共同研究の対象にしたそうですが、どのようなこと分かりましたか?

佐々木 数年分のサーベイを分析することで、教え上手なMMリーダーに共通する特徴を研究しました。その結果、見えてきたものは3つあります。1つめは成長支援の準備をしていること、2つめは成長機会の提供をしていること、3つめは振り返りの支援をきちんとしていることです。つまり、新人の成長にしっかり向き合う心構えを持ち、成長のための場を与え、経験学習サイクルを回す支援を行う、という3本柱が整っていることで「育て上手」になるのです。これらの特徴をハンドブックに落とし込んで、育成スキルのインプットに生かしていくところです。