労働生産性を上げる方法

 ルクセンブルクの人口は約62万人であり、国土面積は神奈川県と同じくらいです。法人税率を低く抑えることで外国企業を誘致し、生産性が高くなりやすい金融業や不動産業、鉄鋼業がGDP比で高い割合を占めていることが世界最高の「背景」といえます。

 1人当たり労働生産性の伸びが著しいのがアイルランドです。1991年の1人当たり労働生産性を見てみましょう。

 アイルランドは6万3051米ドルと、日本(6万1382米ドル)と同水準でした。アイルランドは1990年代後半より、ルクセンブルクと同様に法人税率を低く抑え、外国企業の進出を促しました。

 特にアメリカ企業の進出が相次ぎ、ヨーロッパでの拠点をアイルランドに置く企業が増えました。こうして高い水準での経済成長がみられ、2019年の1人当たり労働生産性は15万5654米ドルとなり、1991年比で上昇幅が2.5倍と突出しています。

経済成長で輸出品目も変化する

 1990年代初頭までのアイルランドは「機械類」や「肉類」などの輸出が中心であり、最大貿易相手国はイギリスでした。

 しかし、現在は「医薬品」や「化学薬品」などが輸出の中心であり、最大貿易相手国はアメリカ合衆国となっています。アイルランドの公用語の1つが英語であることも、アメリカ企業の進出を促した要因であると考えられます。

 また19世紀半ば、アイルランドでジャガイモ飢饉が発生したさい、多くのアイルランド人が食料難民となってアメリカ合衆国へと渡りました。アイルランドとアメリカ合衆国は歴史的にも縁の深い国といえます。

(本稿は『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)