設立時に頭をいちばん悩ませたのは「物流」だった

大山 フードパントリーに関わる企業・団体の方々なども見学に来て、「これはいい!」と思い、人づてで動きが広がっています。農協も協力的です。農産物直売所での売れ残りの野菜はお金を払って廃棄しなければならない。「だったら、ひとり親家庭で生活に困っている人たちに喜んでもらおう」と。

 フードパントリーの立ち上げのときに、私たちの頭をいちばん悩ませたのは「物流」でした。食品の寄贈は、卸の業者さんだと、1箱2箱といった単位ではなく、何百人分といった量になります。「一括で引き取ってもらえれば差し上げられるんだけど…」というリクエストに応える必要があります。しかし、トラックでの引き取りはボランティアメンバーだけの活動では限界があって、その実情を(埼玉)県の公式Facebookで発信したら、ある物流会社さんから「うちがトラックを用意しますよ」という連絡をいただきました。週1回、運送用のトラックを無償で出していただき、(埼玉)県内全域でルートを決め、フードパントリーの開催日に合わせて荷物を配送してくれるようになりました。

 さまざまな人や企業・団体が手をつなぎ、大きな「輪」となって、生活に困窮している人たちを支援していくフードパントリー。SDGsゴール1「貧困をなくそう」、ゴール2「飢餓をゼロに」、フードロスをなくす「つくる責任 つかう責任」(ゴール12)への貢献もさることながら、ゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」の推進もうかがい知れる。

大山 「パートナーシップ」については、他にも良い話があります。たとえば、葬祭業者さんの協力もそうですね。葬祭業者さんは運営しているセレモニーホールをフードパントリーの会場*14 として提供してくれています。セレモニーホールは、実は、周辺地域の住民にはあまりありがたくない側面もあります。イメージが良くないのです。でも、葬祭業者さんは地元に愛される企業になりたいと思い、「何かできることはないか…」と。フードパントリーの会場には、ある程度の広さや駐車場が必要ですから、セレモニーホールは打ってつけです。

 また、友引の前の日がお休みで、「その日だったら、何カ月も前から予約できるから自由に使って構いません」と。精進料理を食べるための設備もありますので、子ども食堂のように食事を提供することもできるのです。

*14 教会・お寺・高齢者施設・児童養護施設・学習塾・店舗・自宅など、さまざま場所がフードパントリーの会場になっている。(特定非営利活動法人 埼玉フードパントリーネットワーク パンフレット「始めよう!フードパントリー 子育て応援編」より)

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