SDGsについて、東北の高校生たちが知って、考え、動いたこと写真提供:遠野市

2015年に国連総会で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)が、新聞・雑誌・ネットといったメディアだけではなく、SNSでも目立つようになった。また、学校の授業でも積極的に取り上げられ、いまや、多くの生徒が「17の目標」を意識するようになっている。2019年に「持続可能な育成プロジェクト」を任意団体として立ち上げ、SDGsをテーマに、企業と学校の連携(コーディネート)を図っている佐々木徳三郎さんに、“学び舎でのSDGs授業”のリアルを聞いた。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「SDGsの誕生理由とは?今後どんな成果を実現していくのか、改めて振り返ってみる」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

SDGsを東京圏以外の生徒たちにも伝えるために

 昨年(2020年)、「持続可能な育成プロジェクト」代表の佐々木徳三郎さんは岩手県遠野市のふたつの公立高校でSDGsをテーマにした授業(学習指導)を行った*1 。まず、佐々木さんがSDGsに関わるようになったきっかけと、東京圏における“企業と学校のコーディネート”からいったん離れ、遠野市での活動に至った経緯を尋ねた。

*1 遠野高校で、50分×8コマの授業(他にオブザーバーや司会進行役で50分×3コマ)を、遠野緑峰高校で、50分×5コマの授業を行った(他にオブザーバーとしても、50分×4コマの授業に参加)。

佐々木 SDGsをテーマに、企業と生徒(学校)を結ぶ役割として、2019年に「持続可能な育成プロジェクト」を設立しました。当初は、東京圏の大学や高校を中心に活動していましたが、2020年に、私の本業での理由があって、遠野市に移住したのです。

 そもそも、私がSDGsに関わるようになったきっかけは、「ESD(持続可能な開発のための教育)*2 」の勉強会における、中央大学附属高校の先生との出会いです。その方は、とてもパワフルで、勉強家で、生徒たちがSDGsを学び、活動へとつなげる授業の中で、私が協働する機会を与えてくれました。コンビニエンスストアでサラリーマンをしていたこともあり、私自身にも生徒たちにも身近なコンビニの「食品廃棄」「プラスチック問題」の課題から “身近なSDGs”を考えていく――それが、SDGsをテーマにした、私と生徒の関わりのスタートでした。

 2030年までの目標であるSDGsは、2020年からは「行動の10年」と言われ、遠野市に移住した後も「東京圏外の生徒とも関わりたい。SDGsを伝えたい。インプットしたものをアウトプットしたい」という思いがありました。そうしたなか、地元の「一般社団法人 遠野みらい創りカレッジ*3(以下、カレッジ)」 さんと出会いました。

 カレッジは少子化で閉校となった中学校舎を拠点としていて、そのスタッフの方と、建物内の食育カフェ「Adagio(アダージオ)」でお話ししました。すでにインターネットで私の東京圏での活動を調べてくださっており、カレッジの “SDGsパートナー”という肩書を私はいただきました。

*2 ESDはEducation for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」と訳されている。「今、世界には環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題があります。ESDとは、これらの現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です。つまり、ESDは持続可能な社会づくりの担い手を育む教育です」(文部科学省ホームページ[持続可能な開発のための教育]より)
*3 一般社団法人 遠野みらい創りカレッジ は2016年(平成28年)4月に設立。

持続可能な育成プロジェクト
佐々木徳三郎 Tokusaburo SASAKI

SDGsについて、東北の高校生たちが知って、考え、動いたこと

在学中にボランティアとして関わっていた障がい児・障がい者通所施設に、大学卒業後に就職。施設利用者の生活全般の支援のほか、行事ごとの企画立案やボランティア育成活動に従事した。その後、小売・流通業に従事し、マネジャー(管理職)として、人材採用・育成、店舗管理などを行う。2016年、一般社団法人(都内)に社会人枠で研究員として入所し、企業CSRと福祉団体の連携・設計、企業SDGsと学校の連携などについての論考を重ね、知的・精神・発達障がい者の社会参加を目的とした公園清掃を行う大手企業のCSR活動にも参画する。2019年に「持続可能な育成プロジェクト」を立ち上げ、現在、SDGsを課題にした企業と学校(生徒)の連携を図っている。また、一般社団法人 精神・発達障害者就労支援専門職育成協会が認定する「就労支援者(ES)」として、企業の合理的配慮と障がい者のメンタルケアを中心に、精神・発達障がい者の就労支援の活動も行っている。