貧困問題について、国民が取るべきアクションは?

 民間が生活困窮者を支援する「フードパントリー」は、新型コロナウイルス感染症予防への万全の対策とともに開催されている*19 。今後のさらなる広がりを期待できるが、現時点での悩みも多いようだ。

*19 コロナ禍での開催においては、「マスクの着用、会場の換気、消毒用アルコールを設置、スタッフ・来場者全員の検温、密にならないような入場制限」などを徹底している。(特定非営利活動法人 埼玉フードパントリーネットワーク パンフレット「始めよう!フードパントリー 子育て応援編」より)

大山 食品寄贈の依頼が殺到してさばききれないこともあります。寄贈いただき、それを配る作業は実は結構な時間と手間がかかるのです。段ボールを開封し、必要に応じて個別封入し、陳列して…と、開催場所のキャパシティーの問題もあって、「○○人限定」とせざるを得ないことも多く、食品の大量の寄贈があっても希望する人たち全員に配れない場合も珍しくありません。ですから、涙をのんで、利用者の「線引き」をしているところもあるのです。ボランティアの問題、食品そのものの問題、開催場所・物流・倉庫の問題…「うちは何もかも余裕があります」というフードパントリーの運営者はいません。

 インタビューの冒頭で、「『貧困』は身近な問題ではない」と思う人も多いのでは?と大山さんに問いかけた。現実感のなさは、「貧困」が目に見えづらいこと・当事者の苦労が分かりづらいことが原因のひとつだが、「貧困」を他人事と思いがちな国民にはどのような行動が望まれるのか?

大山 SDGsのゴール1「貧困をなくそう」――それを考えるきっかけのひとつに、このフードパントリーの存在がなればいいと思います。日本の社会には生活困窮者が多くいて、その人たちを支援する民間の取り組みが広がっている事実をまずは知ること。そして、その取り組みにはさまざまな関わり方があって、あらゆる企業や団体には提供できるリソースがさまざまにあることを理解してほしいですね。もしかしたら、皆さんの企業の取引先やご自宅周辺でも、すでにフードパントリーとの繋がりがあるかもしれません。そして、あなた自身がフードパントリーに関心を持ったら、団体に連絡を入れてボランティア*20 に行くのもいいですね。SDGsやダイバーシティ&インクルージョンへの意識づけや行動の始まりは、それで十分だと思います。

*20 フードパントリー活動において、そのスタッフやボランティアは、活動で知り得た個人情報を第三者に漏らすことがないように厳重に注意している。(特定非営利活動法人 埼玉フードパントリーネットワーク パンフレット「始めよう!フードパントリー 子育て応援編」より)

※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」からの転載記事「SDGsの誕生理由とは?今後どんな成果を実現していくのか、改めて振り返ってみる」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。