運んだのは犬じゃない!
凄腕刑事の直感とは?

「ちょっと待ってろ!」

 佐野は脱兎のごとく家を飛び出した。(運んだのは犬じゃない、松岡の遺体だ!)と直感したのだ。中野署の刑事はポカンと立ち尽くしたままだ。

「金田さん! 吉田が犬の死体を運んだと言っています!」

 佐野は電話口で小さく叫んだ。

「わかった、係長(大峯)に連絡する。そこで待ってくれ」

 金田は声色一つ変えず短く答えた。佐野の報告が重大事項であることは、深く話さずとも金田は理解していた。デスクが情報について根掘り葉掘り聞かないのは、捜査本部内といえども保秘を徹底する刑事の習性といえよう。「連絡する」ということは、大峯はいつものように捜査本部にいないということだった。

 およそ1時間後、1台の車がタイヤを鳴らしながら鉄屑工場の前に横付けされた。捜査車両の中には金田デスク、そして大峯の姿があった。