ホテルや旅館のプロモーションの勘所とはどこにあるのか?特に、インターネットに自ら発信できる昨今、テレビや雑誌といった旧来メディアと、オウンドメディアを含むネット系メディアやSNSとでは、どのように投資配分を変えて活用するのが正解なのか?星野リゾート代表の星野佳路さんに、これまでの取り組みで分かってきたことを聞いた。(構成/斎藤哲也)

プル魅力の伝達

 今回のテーマはプロモーションです。「施設やそのエリアの魅力をどうやって市場に伝えていくのか」です。伝統的な情報媒体は観光ガイドブックであり、今でも相当な力を維持しています。ホテルやエリアがガイドブックに欠かせないコンテンツになることができれば、ピンポイントな市場に対して安価に継続的に情報を露出させていくことができます。

 そもそも、伝えるべき各リゾート施設の魅力コンテンツとは何かと考えると、2種類あると考えています。

 第一は「CS(顧客満足)魅力」、つまり、滞在する顧客の満足度を上げるためのコンテンツです。第二は「プル魅力」、これは、潜在顧客が興味を持ち、自ら施設情報を探索していただくための魅力です。

 これらは内容も目的も異なるので、分けて考えることが大切です。集客のために企画した内容が今ひとつ効果を発揮しないということはよくあることですが、それはCS魅力であっても、プル魅力になっていないということなのです。そういうときに「集客にはあまり効果はなかったが、滞在者には喜んでいただけた」という報告が上がってきます。これは、かけた費用の目的がいつの間にかすり替わり、それでも良しとしてしまっているケースです。観光人材には、こういうすり替えを見逃さない能力が必要です。