世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し(6月30日刊行)、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。

肉食の歴史…ヨーロッパで肉食文化が栄えた理由Photo: Adobe Stock

ヨーロッパの肉食文化は「農業発達」から生まれた

 1日に必要なカロリーは、2000~2700キロカロリー程度といわれています。摂取カロリーは1グラムにつきそれぞれ、タンパク質4キロカロリー、脂質9キロカロリー、炭水化物4キロカロリーです。脂質を多く摂れば、その分高カロリーとなり、逆もまたしかりです。

 1人1日当たりのカロリー供給量を地域別にみると、欧米諸国で高く、アジア・アフリカ諸国で低い傾向にあります。想像通りですね。欧米諸国の人たちは動物性タンパク質の摂取量が多いため、その分脂質の消費量が高くなっています。

 消費カロリーの内訳をみると、欧米諸国の多くは動物性由来が30%前後。しかしアジア・アフリカ諸国は多くても20%前後で、10%に満たない国も数多く存在します。

 ヨーロッパが起源とされる農業に商業的混合農業、酪農、園芸農業、地中海式農業の4つがあります。

 西北ヨーロッパは年中平均して降水が見られ、気温の年較差(最暖月と最寒月の平均気温の差)が小さい気候(西岸海洋性気候)が展開します。そのため、1年を通して穀物栽培が可能なことから、自給用だけでなく飼料用穀物の栽培も行われ、家畜の頭数を増やすことができました。

 こうして人口増加により肉類の需要が高まっても、それを満たすだけの肉類の生産が可能だったわけです。