当然のことだが、「盛り土」は単に土を盛り上げるだけでなく、しっかりと固めて住宅や道路などの建設に耐えうる強度を持たせることが必要だ(「転圧」作業を実施して土の粒子の間にある空気や水を押し出し、粒子同士の密度を高めるなど)。

 また、底に水がたまって「盛り土」の一部が流出したり地滑りが発生しないよう排水関連設備の設置も重要になるし、技術的には液状化や沈下が発生しないようにすることも求められる。

盛り土の工事をめぐる
規制上の問題とは

 今回の熱海で発生した土石流の直接の原因は、冒頭説明した通り、線状降水帯の発生による豪雨という自然現象である。熱海市では数年前、当該地域に防護壁を設置したとの報道があったが、今回の土石流はそれを乗り越えており、改めて自然災害の大きさを認識させられることとなった。

 また、報道などではしきりに土石流と「盛り土」との因果関係について取り沙汰されている。概説したように「盛り土」は実施した後に長年にわたって盛った土の流出・崩壊・沈下が発生しないよう工事する必要があるが、「宅地造成等規制法」でそもそも自治体の長が造成宅地防災区域に指定していなければ、届け出や許可・完了検査などの前提とはならないから、工事が規定通りに行われているか確認することについては困難を伴うと考えるべきだろう(たとえ規定通りに工事されていたとしても自然災害を抑止できたかは確かめようがない)。

 また、業務所管が国交省以外に農水省、環境省にも渡っていることも、事態解決に向けてのハードルがあると言わざるを得ない。

 2014年8月に発生した広島土砂災害は、比較的急峻な傾斜地を宅地造成した安佐南区と安佐北区に被害が集中しており、また2018年9月に発生した北海道胆振東部地震では、札幌市清田区の盛り土造成をした住宅地で、液状化現象や陥没が多数発生している。

 この地震発生を機に、国交省が全国の自治体に大規模造成地(3000平方メートル以上)の調査を指示したところ、盛り土造成地が約10万haに達することが判明し、5万カ所以上がハザードマップに掲載されたことは記憶に新しい。