●全国の999市区町村に約5万箇所ある大規模盛土造成地は、すべてが危険な土地というわけではありませんが、耐震性が不十分な場合は、大地震等により滑動崩落が生じ、人命や家屋等に甚大な被害が発生する可能性があります。

●国土交通省では、大規模盛土造成地マップを作成・公表し、地方公共団体による調査を促進してきていますが、令和3年3月末で安全性把握まで着手済なのは63市区町村(着手率6.3%)、うち完了済は39市区町村となっています。

●令和7年度末でこの着手率を60%とする目標へ向けて、地方公共団体の取組を加速します。

 参照:https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi06_hh_000071.html

 全国の盛り土がされている造成地を一カ所ごとに調査し、その危険性(専ら耐震性に着目している)を判断して調査を完了するには相応の時間がかかることは認識できるものの、このように毎年大規模な自然災害が発生し続けている現状を考慮すれば、一刻も早い調査および危険度判定ごとの対策工事が望まれる。

宅地造成などで行う
「盛り土」と「切り土」の違い

 ここで「盛り土」とは何かを簡単に解説すると、低地などそもそも浸水被害が想定されやすい土地をかさ上げしたり、山間部や丘陵地など傾斜のある土地に土を盛って平坦にしたりする基礎的工事のことだ(盛り上げた土の部分そのものを指すこともある)。住宅建設などに適した平坦な土地が少ないとされる日本では、旧来から建物を建設可能にするために当然のこととして行われてきた。また河川の堤防を建設する際も同様に「盛り土」が行われる。

 一方、傾斜のある土地を削って平坦な土地を創出するのは「切り土」と言われ、こちらも頻繁に使われる基礎工事だが、削った土の処分や削った箇所から残置物が発見されたり、少ないながら場合によっては遺跡などが発見されたりするケースもある。斜面に造成される住宅地では、「切り土」した土をその下の土地に「盛り土」してひな壇状に宅地開発されるケースが多い。