対象となった地域は地盤改良工事や地下水の排出設備の設置などの対策が必要となるが、住宅地としての資産性や安全性に疑念が生じるような事態でもあり、さまざまな思惑も交錯して対策工事に関する合意形成や費用負担について進捗が見られないところも散見されている。

産廃処理問題もからむ
暗くて深い「盛り土の闇」

 熱海市の土石流発生に関連して、赤羽国交相は静岡県が発生地の盛り土と土石流の関連性を調査していることを認識した上で、農水省、環境省と連携して全国の盛り土を総点検する方向で考えると発言している(考えると発言しただけで実施するとは言っていない)。

 北海道胆振東部地震発生を機に一度調査しているが、仮に前回対象となっていない3000平方メートル未満の盛り土造成地も調査するとなると大変なコストと時間がかかるものと考えられる。これは国交相の発言として極めて重く受け止めるべき問題であり、国民の生命と財産にかかわる国の重要課題として長期間にわたって徹底的に調査する必要がある。

 また、盛り土については産業廃棄物処理の問題とも深い関わりがあると言われており、残土を処分する際に土以外の廃棄物を混ぜて処理してしまうケースもあるとされる。こうなると「盛り土の闇」は深く暗いと言わざるを得ず、問題の抜本的な解決を図るには相当の覚悟も要することになる。

 残土の処理や宅地造成の課題、激甚化する自然災害など解決すべき課題は山積している。熱海で発生した土石流は、政治・行政のこれまでの体制と対策も一気に押し流そうとしているように見える。

(記事は個人の見解であり、執筆者が所属する会社の見解を示すものではありません)。