ホテル人材マーケットはコロナ禍でどのように変化しているのか。宿泊産業におけるヘッドハンティングや人材紹介事業を手掛ける第一人者が、ホテルマン・ウーマンの年収実態と、ポストコロナで求められるホテル人材を解き明かす。(アイ・エヌ・ジー・エンタープライズ 橋本 伸)
有効求人倍率が6~7倍から1以下にダウン
ホテルマン・ウーマンの年収実態とは!?
ホテル業界は完全に、「売り手市場」から「買い手市場」に変化した――。コロナ禍の前後で、ホテル人材マーケットがどのように変化しているのか聞かれれば、その一言に尽きる。筆者は長年、宿泊産業におけるヘッドハンティングや人材紹介事業を手掛け、「ホテル求人ドットコム」という求人プラットフォームを提供してきた。
コロナ禍になる前、宿泊産業の有効求人倍率は6倍とも7倍ともいわれていたが、現在は1を下回っているような状況だ。
ホテル求人ドットコムでも、2020年2月までは毎月4000件超の求人を掲載していた。それが20年3月に3000件台、4月に2000件台になり、以降は月1500件前後で推移している。これに伴い採用数(マッチング成約数)も2019年に比べると2020年は4割減った。
一方、応募者(掲載の求人に対して応募した人数)は2割弱増えた。背景には「雇用不安」がある。従業員に対して、休業手当を出したり、自宅待機を命じたりしているホテルは多いし、「雇い止め」も少なくない。ホテル業はもともとパートやアルバイトの非正規社員が多い。働く人たちに雇用の不安が募っている結果、応募が多かったのだ。
ただ、それらの大半は「本気」というよりも「お伺い」だ。「どんな状況ですか」「なにかいい求人はありませんか」という問い合わせが、若手から部長クラスまで非常に多かった。情報集めに動いていたわけだ。
筆者も直接、相談を受けることが多々あるが、以前は30分程度だった面談が、コロナ禍以降は1時間半や2時間も対応することもある。聞こえてくるのは会社の方針や上司の言動への不満だ。無理もない、少し前までホテル業界は空前のバブルで「超」が付くほどの人手不足、どんな人材も重宝されていた。それが一変して大不況に陥っているのだから。ギャップは計り知れない。
それでは、コロナ禍になる前、ホテル業界の人材マーケットはどれだけ活況だったのか。そしてホテルではどんな職種があり、年収はどれくらいなのか。独自のデータとともに分析してみよう。