コロナ禍で大打撃を受けている帝国ホテルが、新規事業のサービスアパートメントや、懸案だった「帝国ホテル東京」の建て替えや京都・祇園での新規出店などにアクセルを踏んでいる。社長就任9年目になる定保英弥氏に話を聞いた。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)
30泊36万円のサービスアパートメント
きっかけは5473件の従業員メール
――3月に帝国ホテル東京でスタートした「サービスアパートメント」が大きな話題となっています。新たな事業として取り組むきっかけは、何だったのですか。
海外の都心部にある一流ホテルは、長期滞在用のスイートルームや、サービスアパートメントを持っているホテルが結構あります。私も海外出張の際にはいくつか見学して回るなど、以前から構想はありました。
一方で、もともと帝国ホテル東京では「大女優」と呼ばれる方々が長期でお泊まりになって、近くの帝国劇場や日生劇場に、(芝居の本番と)お稽古の期間も含めて通われていました。立地もいいですし、さまざまな方に長期滞在のニーズがあると思っていました。
新型コロナウイルス感染症が広まって、特に海外からのお客さまが途絶えてしまった。全931室のうち、季節によっては半分強がインバウンド(訪日客)だったので、客室をどうやって稼働させるかが大問題でした。
最初の緊急事態宣言が発令された時、従業員の8割に休業をお願いしました。その間、全従業員にメールを送ったんです。「苦しい時だけど頑張ろう」「雇用は守る」とメッセージを発信しました。加えて、感染対策や販売促進、経費削減など、どんなジャンルでもいいから「アイデアを出してほしい」「みんなの新しい提案を送ってください」「現場から経営に力を貸してくれ」と書いたんです。
そうしたら、従業員は2600人ほどいるのですが、5473件ものメールが返ってきたんです!