後藤禎一・富士フイルムホールディングス社長Photo by Kazutoshi Sumitomo

2000年から経営トップを務めた古森重隆前会長が、6月末の株主総会をもって最高顧問に退いた富士フイルムホールディングス(HD)。後継者の後藤禎一社長兼CEOは、古森氏の悲願であった「医療事業で売上高1兆円」を26年度に実現する目標をぶち上げたが、20年度の売上高は約5600億円と達成への道のりは遠い。医療事業への投資資金を稼いできた事務機器事業も先行きは不透明だ。悲願達成に向け、後藤新社長はどんな青写真を描いているのか。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

新社長の強みは「海外で磨いた冒険心」
日立の画像診断事業買収も主導

――2000年から経営トップを務めた古森重隆前会長が6月末の株主総会をもって退任しました。“カリスマ経営者”の後を継ぐことに重圧はありますか。

 古森が退任前に繰り返していた「経営トップは真剣勝負」という言葉の意味を実感し、全社の先頭に立って指揮を執ることの重みをひしひしと感じているところです。

 この言葉には「企業経営は本物の刀で戦うのと同じ。失敗は命取りになる」という戒めが込められています。まだ日は浅いですが、トップ交代を発表した3月末以降はその心構えで意思決定を下してきました。

――古森前会長はかつて、後継者の条件に「ロマンと冒険心を持つ人」を挙げていました。抜てきされた理由を、ご自身ではどう分析していますか。

 私は石橋をたたいて渡るのではなく、勝負どころで思い切って攻めるタイプなので、ロマンや冒険心は持っている方だと思いますよ(笑)。

 そうした判断能力は、ベトナム、シンガポール、上海などに17年ほど赴任した若手時代に、現地法人の経営に携わる中で磨きました。国によって事業環境が異なる中で、東京本社にお伺いを立てて答えを待つのではなく、自らその場で判断を下してきましたから。

 帰国後は、医療機器部門のトップを10年ほど務め、社長就任が決まる直前に日立製作所の画像診断事業の買収交渉をまとめました。この点も、後継者として評価される決め手になったのかもしれません。

――後藤社長に課せられたミッションは、古森前会長の悲願である「医療関連ビジネス全体で売上高1兆円」の実現です。20年度の実績は約5600億円と2倍にする計画ですが、どのように達成しますか。