富士フイルムホールディングス(HD)の古森重隆最高顧問にとって、キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長は積年のライバルだ。特集『決算書100本ノック! 2021夏』(全10回)の#1では、ROAの推移から「長老対決」の歴史を振り返りつつ、2020年度決算での勝敗を読み解く。かつて“勝ち組”だったキヤノンを富士フイルムHDが追い抜いた背景には、M&Aを巡る「ある因縁」があった。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
古森氏が宿敵・御手洗氏に勝利
ラストイヤーに遺恨を晴らす
ついに宿敵を撃破した――。6月末に会長を退任した富士フイルムホールディングス(HD)の古森重隆最高顧問(81歳)は、さぞや溜飲を下げたことだろう。
退任直前に発表された2020年度決算における「ROA(総資産営業利益率)」が、前年度に続いて競合のキヤノンを超えており、因縁の対決に打ち勝ったのだ。
古森氏が2000年から経営トップを務めた富士フイルムHDは、御手洗冨士夫会長兼社長(85歳)が1995年から率いるキヤノンと、事務機やカメラの分野で熾烈な“長老対決”を繰り広げてきた。
長年“勝ち組”だったのはキヤノンだ。御手洗氏は資産圧縮などを通じて財務体質を強化する「バランスシート重視の経営」を実践。過去20年間の大半で富士フイルムHDのROAを上回ってきた。
にもかかわらず、富士フイルムHDはなぜ、古森氏の退任間近になって逆転することができたのか。