古森重隆・富士フイルムホールディングス会長兼CEO(最高経営責任者)がダイヤモンド編集部の取材に応じ、コロナショックによる経営のかじ取りの難しさについて、「メインビジネス崩壊やリーマンショック時に比べれば易しいのではないか」と語った。特集『電機・自動車の解毒』(全17回)の羅針盤なき経営(4)では、大注目のアビガンが薬事承認間近でますます血気盛んなベテラン経営者に経営論を聞いた。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
コロナで社員の在宅勤務は進むも
仕事の基本は対面コミュニケーション
――古森会長、あるいは社員の働き方の意識はコロナショックで変わりましたか?
在宅勤務をかなりやっていて、結構仕事になるなという認識です。今後ある程度、在宅勤務を取り入れていく制度の検討が必要かなと。ただ私の長いビジネス経験から言うと、やはり人間は書類や電話より、対面してコミュニケーションや意思疎通。これがものすごく大事です。この基本は厳然として残ります。だからまあ従来のやり方を変えて大幅に在宅勤務にするということはあり得ません。やはり、会社に出てきて上司や仲間とコミュニケーション。この形態は変わりません。一部女性の産休前後などの場合、在宅勤務でもいいなというものはあるかもしれない。そういうふうに社会は制度を使い分けていくことになると思います。
――古森会長ご自身はコロナで働き方に変化はありましたか?
いいえ、毎日会社に出ています。会長、社長(助野健児社長)が出社していないっていうのは違うんじゃないですか? 社員のモチベーションが(下がってしまいます)。
――ちなみに、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長は徹底したテレワークをされているようです。
小林さんは合理的な男だから。人によって、そういうこともあり得ます。私は違います。やはり会社は人間の集団。情報だけが飛び交っていれば済むという問題ではありません。会って「話を聞く、相談する」というのは必要不可欠な行為じゃないでしょうか。そのパーセンテージを減らすというのが小林さんのお考えなんでしょうけど。
――コロナショックを企業経営のプラスに捉えられる面はあるのでしょうか?
捉えるとすれば、何でしょうね。その前に社会がこの問題をプラスに捉えるべきだと思います。企業が何をやるかというよりも、社会的な問題ですね。今回のコロナの発生原因は何だったのか、初期にどういう対応がなされたのか、何が足りなかったのか、世界への伝え方、トラフィックの在り方、防疫体制、薬、病院の状況、保険制度……。いろんな問題が出てきている、あるいは今後出てくるわけです。今言ったようなことを検討して整理すべきですよ。次回から起きないようにするにはどうすべきか。マニュアルじゃないけど、こういうことをきちんと整理して反省すべきですよ。これをしないとパンデミックがまた起きますよ。そして被害はだんだんと大きくなります。
――社会がそういう対応をする中、富士フイルムホールディングスが貢献できることはありますか?
私たちは消毒薬も売っていますし、検査薬も売っていますし、薬も売っていますし、医療診断機器も売っています。ですから貢献の余地があるかもしれません。例えば今も肺炎の診断なんかにCT(コンピューター断層撮影)やレントゲンが使われているわけですが、新たにどういう医療機器が必要なのか。ニーズのある商品があれば開発することになると思います。