経済発展のための新しい価値を生み出すためには、同質的な集団より、価値観の異なる多様性を持つ集団が必要だ。ところが「出る杭は打たれる」という足の引っ張り合いは、それを阻害することになるのだ。

 ワクチン接種への同調圧力が生まれるのも、「人間平等主義」のためねたみ意識が強く、「自分は自分。他人は他人」とならず、過度の足の引っ張り合いになるからだ。

 これから職域接種がさらに増え、自治体によるワクチンパスポートの交付も始まる。ワクチンを打たない人間への差別や人権侵害は、ますます深刻な問題になる可能性が高い。だが持病やアレルギーに限らず、打たない理由はいろいろあるはずだ。

 必要なのは、私たちがたくさんの「世間のルール」に縛られていることを自覚し、お互いの足の引っ張り合いをやめて、他者に豊かな想像力を働かせる態度だろう。

(九州工業大名誉教授・評論家 佐藤直樹)