転職サイト「ビズリーチ」などを運営する巨大スタートアップ、ビジョナル。『突き抜けるまで問い続けろ』では創業後の挫折と奮闘、急成長を描いています。2021年4月に東京証券取引所マザーズに上場を果たしたビジョナルを、創業期から支えてきたのが、ベンチャーキャピタルのジャフコグループです。同社のパートナーを務める藤井淳史さんは、創業者の南壮一郎さんが「恩人」と呼ぶ人物の一人。ジャフコグループはビズリーチが創業間もないころに立ち上げた二つの事業に投資をしていました。

■ジャフコグループが見たスタートアップ、ビズリーチ01回目▶「ジャフコ藤井淳史氏「ビズリーチが現代のスタートアップの土台をつくった」」
■ジャフコグループが見たスタートアップ、ビズリーチ02回目▶「ビズリーチ、成長の原動力は「とにかく優秀な人を採りまくる」ことだった」

ビズリーチ、創業間もない当時に“二足のわらじ”で大成功していた創業間もないころからビズリーチを支えたきたベンチャーキャプタル、ジャフコグループ。中でもパートナーの藤井淳史さんは、ビズリーチをよく知る人物の一人だ。

――ビズリーチ創業者の南壮一郎さんは、ビズリーチを創業している最中にも、あえて全然違う「ルクサ」というEC(電子商取引)サービスの事業を立ち上げていました。

藤井淳史さん(以下、藤井) 我々が2010年2月にビズリーチに投資し、その年の8月に、今度はルクサを始めていたんです。普通は、びっくりするじゃないですか。しかも事業にはほとんど関係性がなかった(笑)。最初は高級なサービスや商品をお得に提供するサービスという位置づけにして、ビズリーチのユーザーとシナジーを狙うというアイデアがあったみたいですが。

――でも、最終的にジャフコはルクサにも投資をすることにしましたよね。

藤井 南さんが、ルクサをビズリーチ社内でやっていると聞いて。サービスを開始してしばらくしてから、オーダースーツのクーポンを出したら結構、売れたんです。それでいけそうだというので、ルクサも事業として本格的にやりたいという話があったんです。そして、2010年10月に別会社化して、12月にジャフコがルクサに投資をしました。5億円ですね。

――ビズリーチよりも投資額が大きかったんですね。

藤井 もう、意味が分からないですよね(笑)。でも当時、ルクサはホームランを狙いに行くビジネスだという話でした。ビズリーチは手堅く、確実に点を取りにいく。その辺りの明確な位置づけの違いはあったようです。

 そもそも、南さんとお会いしたばかりの頃に、彼は「ジャフコさんとは新しい事業を10個はつくりたい」という話を南さんはしていたんです。そうしたら第2打席が思いのほか早かった(笑)。

 これも南さんらしいんですけど、ビズリーチの資金は決してルクサに使っていないんです。調達した資金の目的は遵守すると約束していました。

 ただ、それでも創業したてのスタートアップで二足のわらじは大変です。最後は、創業メンバーである村田聡(現・ビズリーチCOO=最高執行責任者)さんにルクサの社長をお願いすることになりました。

 結果的に、ルクサがその後、順調に成長してKDDIに売却できたことで、その売却益を生かしてビズリーチの有名なテレビCMを打てることになった。そういう意味でも、ルクサを続けてよかったと思います。
(2021年8月10日公開予定の記事に続く)