「歴史好きな自分」をつくった児童書ベスト4

―― 子ども向けの本を読み漁ったんですか?

本郷 当時の愛読書は『日本の歴史』シリーズ(和歌森太郎/監修、集英社)で、父親が買ってくれました。あとは偕成社から出ていた児童向けの『太平記』や『平家物語』とか。『眠狂四郎』の柴田錬三郎先生が、子ども向けに書いていた『三国志』などの歴史物をよく読んでいました。

 そのような児童向けの歴史物語を、父親がいっぱい買ってくれたおかげで、日本史だけでなく古典にも親しむようになったんです。

 子どもですから、教科書のように事実の羅列だけ書いてある本だけだったら、そこまで読みたいと思わなかったでしょうね。歴史にもやっぱり物語があるから惹き込まれていくわけです。登場人物の個性があって、物語があって、ロマンがある。そういう書き方をしている本だから夢中になって読んだのでしょうね。

―― どんなに偉い歴史上の人物でも、物語を読むと感情移入しますよね。

本郷 いまでもよく覚えているのは、父親が買ってきたお城の本シリーズ。その中に『高知城』っていうのがあってね。『高知城』は南北朝時代に建てられたからずいぶん古いんですけど、大高坂(おおたかさ)松王丸っていう武将がいたんです。松王丸っていうんだから元服前ですよね。だけど戦ったんだから、12~13歳くらいだったのかな。つまり子どもの武将が、南朝のために戦ったんですよ。

 でも、松王丸は北朝の細川氏が優勢で戦死してしまいます。子どもでも出陣して死んでしまう時代だったんですよ。自分と同じぐらいの年の子が戦いで死ぬ。そんな話を読んだら、当時は大変だったんだな、って感情移入してしまいます。歴史って、自分とおなじ人間たちが創り上げてきたんだなって。

 子ども時代にありがたかったのは、父親が僕に歴史の話をいろいろ教えてくれたことです。そして、家族で歴史に関係あるところを旅行する習慣ができた。あそこのお寺はどうのこうのとか、今度はこういう観光バスに乗ってみようかとか、そういうことを話し合う環境があったんですよね。

―― 親のアシストで、興味の伸び幅が変わるんですね。すごく楽しそうです!

本郷 楽しかったですね。家族みんなで楽しんでました。正直、母親はそこまで歴史好きでもなかったから、温泉とかグルメとかがよかったのかもしれないけど、いろいろ付き合ってくれたんでありがたいなと思ってます。

―― それで、中学・高校で歴史の授業を受ける頃には、すでに知ってる知識がほとんどだったんですね。

本郷 そうです、そうです。だから同級生とは歴史を見る目線も変わっていて。いまでも覚えてますけど、中学1年生のときにレポートを書かされて、1年間かけて「13世紀の東洋と西洋が戦ったらどっちが勝ったか?」っていうことを書いたんです。それに先生が驚いて、こんな変な奴がいるんだっていうことが、後々まで言われ続けたみたいですね。

―― おもしろそう! 読んでみたいです(笑)。受験勉強ありきの授業だと、歴史は暗記教科という位置づけで本当につまらないですよね。

本郷 物語がないですからね。人間って、無味乾燥なものを覚えろって言われても、なかなか覚えられないものなんですよ。

―― いまでも、「1192(いい国)つくろう鎌倉幕府」とか年号の語呂合わせを覚えてますけど。

本郷 僕だって、「894(吐くよ)ゲロゲロ遣唐使」とか「平清盛1167(いい胸毛)」とか覚えてますよ。

 でも、語呂合わせひとつとっても「白紙(894)に戻す遣唐使」より「吐くよ(894)ゲロゲロ遣唐使」のほうが、中国まで船で行く間にみんな気持ち悪くなるからやめちゃおうってなるでしょ? ちょっとでも物語があったほうがいいよね。とはいえ、いまはスマホですぐに調べられますから。年号の暗記の重要度は学校の勉強以外では下がってきていますね。