“すごい”と”やばい”の両面から、日本史の偉人たちに迫る『東大教授がおしえる やばい日本史』が話題になっている。発売後、即5万部の重版がかかり、Amazonの日本史和書ランキングでも1位に躍り出た。
児童書として作られた本書だが、ビジネス街の書店で大人にも買われているという。本書の監修を担当した、東京大学史料編纂所教授の本郷和人さんは「“すごい”と“やばい”の両面を知らなければ、歴史を知ったことにはなりません。そして歴史にはいろいろな側面があるのです」と語る。
(聞き手:滝乃みわこ)
「歴史に学ぶくらいならワンピースを」は本当か
『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』の著者・呉座勇一さんが「歴史『を』学ぶのではなく歴史『に』学ぶのは危険。『物語』が欲しいならワンピースやスラムダンクを読んで」と言ったことが話題になった。
だが、現代に生きる我々が歴史に学ぶことは本当にできないのだろうか?
「たとえば、織田信長や徳川家康は生まれながらにして”殿”になる家柄。庶民感覚とはかけ離れ育っていますから、今の僕たちの人生とぴったり重ね合わせるというのは確かに無理があります。昔と今では価値観や倫理観だってちがいますからね。
ですが、反面教師として、歴史人物は非常に優秀です。豊臣秀吉なら、現代人でも学ぶところが多いと思いますよ」
貧しい身分から天下人となり、公家の最高位である太政大臣にまで成り上がった豊臣秀吉。立身出世のシンボルとして、昭和のビジネスマンには不動の人気があった歴史人物だ。
「でも最近、秀吉はあまり若い人に人気がないんです。昭和の高度経済成長期は、秀吉のように貧しい身分から成り上がることがリアルに感じられた時代で、その象徴が“今太閤”田中角栄でした。
角栄の異名の“今太閤”とは“今の秀吉”という意味。学歴がない角栄が総理大臣にまでのし上がったことを、マスコミが秀吉になぞらえてもてはやしたんです」