アリョンカチョコレートの「アリョンカ」とは?

 アリョンカチョコレートは、モスクワの名門菓子メーカーのクラースヌィ・オクチャーブリ社(日本語では「赤い十月」)の主力商品で、ロシア国内ではどこでも見つけることができる。ロシアでチョコレートと聞くとあまりなじみがないかもしれないが、お菓子産業は19世紀ロシア帝国時代から盛んだった。モスクワの中心部に位置する工場は現在稼働を停止させている。なお、業務スーパーで販売されているのはチョコレートではなく、同社のビスケット(プレーン・ココアの2種類)のようだ。ビスケットもチョコレートと同じ女の子の写真を使ったパッケージデザインとなっている。

 クラースヌィ・オクチャーブリ社の前身会社が設立されたのはなんと1849年、日本ではまだ江戸時代だった。その後、1917年のロシア革命を経て国営化され、会社名が変更されて今に至る。アリョンカチョコレートが発売されたのは1966年。ソビエト連邦政府から何か新しいチョコレート製品を作れないかという問い合わせがあり、できたのがアリョンカチョコレートだった。

モスクワ市内にある、アリョンカ専門店。モスクワ市内にある、クラースヌィ・オクチャーブリ社の直営店。アリョンカの専門店となっている Photo by Yuki Tokunaga

 アリョンカとは、ロシア人女性名「エレーナ」の愛称形で、日本語に訳すと「エレーナちゃん」という意味である。その「エレーナちゃん」とはいったい誰かというと、アリョンカチョコレートが売り出される数年前、世界初の女性宇宙飛行士として宇宙遊泳に成功したバレンティナ・テレシコワの娘である。このエレーナちゃんは世界で初めて宇宙飛行士を両親に持つ子供になったのだが、ソ連では宇宙飛行士は国の英雄。つまりアリョンカチョコレートは、「英雄の子」の名を冠す由緒正しいチョコレートなのである。