要約者レビュー

 お菓子――それは日常にあるあたりまえの物。おいしいお菓子が目の前にあると誰もが微笑まずにはいられない。日本だけでなく、世界でもお菓子は愛される存在だ。著者は様々な国に行きお菓子を手に取るが、いつも「日本のお菓子の方がだんぜんおいしくないか?」と感じている。

 日本のスナック菓子も海外の人に食べられてはいるが、インスタントラーメンの世界進出規模には全く及ばない程度にとどまっている。日本のお菓子はこんなにおいしいのだから、相当のポテンシャルを持っているに違いないと著者は言う。少子化の日本とは違い、海外には人口ボーナス期に突入する国がたくさんあり、まだまだ未開拓の市場が広がっている。客観的に見て日本のお菓子の立ち位置は世界でどうなっているのか? どうすれば世界に出ていけるのか? 本書『「ポッキー」はなぜフランス人に愛されるのか?』は、非常に緻密な取材をふまえて、日本のお菓子の限りない可能性を描いている。

「ハイチュウ」「ポッキー」「柿の種」などのなじみ深いお菓子が次々に登場し、それぞれの海外戦略が紹介される。そうしたストーリーから感じ取れるのは、変わろうとしているお菓子メーカーの姿だ。日本のお菓子メーカーが一緒になって決死の努力をし、世界にお菓子を広めようとしている姿が目に浮かんだ。

 この本で、小さなお菓子の袋に秘められたとんでもない実力と将来性に、一緒に思いを馳せようではないか。日本のお菓子が世界で愛される未来がすぐ近くにある。 (山下 あすみ)

著者情報

三田村 蕗子
福岡県生まれ。津田塾大学卒業後、マーケティング会社などを経て、現在フリーのジャーナリスト。流通業を中心に、ビジネス全般に関するテーマを追いかける。商売の仕組みや仕掛け、そこから生み出される世相や日本独自の消費傾向に関心を置く。主な著書に『ブランドビジネス』(平凡社新書)、『論より商い』(プレジデント社)、『世界一うるさい消費者にモノを売る50の方法』(同文舘出版)などがある。2014年11月からバンコクに拠点を移し、東南アジアに進出する日系企業や日本人企業家の取材にも力を入れている。

評点(5点満点)