政治信条まで潰してはならない

 これが正しいかどうかはさてき、実はこの構造は「生産性向上」にも当てはまる。

 これまで日本商工会議所や日本の経済評論家などの常識では、中小企業に税金をじゃんじゃん投入して、設備投資などを応援すれば、生産性が向上して、従業員の賃金も上がるとしてきた。

 しかし、この方向性を50年続けてきた結果が、今の日本の生産性の低さと、先進国の中でダントツに低い賃金だ。

「首相のブレーン」として知られる小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン氏は、海外の最新の分析などをもとに、これを「逆」だと主張している。つまり、生産性を上げてから賃金を上げるのではなくて、賃金を上げていくことによって、中小企業経営者が生産性向上に動き、そこからまた賃金が上がっていくという好循環につながるというのだ。

 こちらが正しいとしたら、「政治家の給与削減」や「減税」も同じなのではないか。我々は少しでも豊かな生活をしたいと、「こんな安月給じゃあ改革してくれないぞ」「お金に困ってヘソを曲げて不正でもしたらどうするんだ」と必死になって自分たちの血税を“政治家様”に献上してきたが、実は事態を悪化させているのではないか。

 今回の騒動で一つだけ筆者が心配しているのは、メダルかじりバッシングの巻き添えになる形で、河村氏が続けてきた「政治信条」まで潰されてしまうのではないかということだ。

「やはり政治家にはバーンと2000万くらい出さないとレベルが低くなっちゃうな」
「減税なんてパフォーマンス政治をしているから、あんな非常識な人間になるんだ」

 こんなことになれば喜ぶのは政治家と、そこにぶら下がる上級国民の皆さんだけだ。河村氏を叩いている人も、ぜひそこだけは切り分けてお願いしたい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)