中国も、ビジネスも、常に変化している。十分にわかり、納得できる日は未来永劫やってこないのである。そんななかで新しいアイデアを出し続けるコツは、中国人が言うことも含めて“常識”を疑うことにあるようだ。

 日本の常識を捨てる。成功体験も捨てる。郷に入っては郷に従う。中国人が本当に求めているものを探る……。あくまで私の真意は、次に言うコレです。

中国に染まれ。ただし、染まりすぎるな!

 なぜか。染まりすぎてしまっては、新しい発想ができなくなるからです。中国人がこう言っている、だからそうなのだろう、と安易に信じてしまうことも、実はあまりに危険なことです。では、本当にそうなのか。検証もせずに鵜呑みにしてはいけない。それこそ、「染まりすぎるな」なのです。

まずは実践してみて、結果が出なければやめればいい

 何もやらずに評論することは、私にとっては許されないことでした。何事でも、まずは実践してみる。結果は後からついてきます。ついてこなければ、次からやめればいいのです。

 店舗がオープンしてしばらくしたあるとき、中国人と激しい議論になりました。当時は、レストランに行っても、冷たいビールなど、どこにもなかった時代でした。中国人に言わせれば、「漢方4000年の歴史の中で、冷たいものは身体に悪いと決まっている。だから、中国人は夏でも熱いお茶しか飲まない」というのです。

 そう言われれば言われるほど、本当かどうか、試したくなるのが、私の悪い癖でした。それで雪のちらつく寒い日に、「アイスクリームとかき氷の大特売」を実施したのでした。そんなものは絶対に売れない、と中国人は言いました。ところが、何が起こったか。売れた、売れた、アイスクリームは2000個、かき氷は500杯も売れたのです。

 私と議論した中国人はこう言いました。「近頃の中国人も変わったのだ」と。変わったのではないのです。もともと中国には、冷凍冷蔵などという設備も習慣もなかったのです。だから、みんな常温を当たり前と思っていた。冷たいものを飲みたくても、飲めなかったのです。

 もっと言えば、「お前の家は冷蔵庫もないのか」と思われたくなかった。メンツの国ですから。だから、漢方の話にすり替えられてしまった。

 なんでも中国人が言うことが正しいわけではないのです。染まることと、それが本当に正しいことなのかと検証することは別物なのです。中国人の勝手な判断を信じてはいけない。