今夏、中国に進出中の日系企業は、日系製品の買い控えやそれに伴う減産、従業員のストライキなどへの対応に追われた。北京に8店、成都に5店を展開するイトーヨーカ堂は、店舗の破壊や商品の略奪といった被害こそ受けなかったものの、中国人従業員が、中国人の顧客に嫌がらせを受けることもあったという。しかし、それを苦に辞める社員はほんの数名にとどまった。日本人幹部たちが膝詰めで中国人従業員たちと話し合い、「自分たちは誰のために仕事をしているのか?」「日本企業という場を借りているだけで、中国人の生活をよくするために働いているのではないか」と確認し合ったことが奏功したようだ。そうした風土をゼロから築いた、同社初代中国室長の塙昭彦・セブン&アイHLDGS.顧問に中国の動きについて見方を聞いた。
Q. 日系企業からは、なぜこんな目に遭わなければならないのか、と悔しがる声も聞こえてきます。
もともと、何が起こるのかわからない、それが中国です。そう思って商売をしなければいけないと思う。
先週は中国共産党全国代表大会が開催され、習近平新体制に移行するタイミングだったためか、各経済誌が中国特集を組み、チャイナリスクが大きく取り上げられていました。しかし現在の情勢下でも「右顧左眄することなく、なすべきことをなせ」という基本姿勢は変わらないはずです。
厳しい時代こそ、まず自分を変えるほかない
とかく相手が中国といえば、みな経済優先で、政治がどうなっているか、人脈をいかに確保するか等を気にしてばかり。真正面から取り組もうとしません。論語の教えに『行くに小径によらず』とあるように、裏通りでなく常に大通りを歩むべきでしょう。厳しい時代であるほど、自分を変え、会社を変え、考え方を変え、行動を変える以外ありません。
Q. しかし、今回の反日感情の高まりは従来以上に見えます。
もちろん私も、パナソニックやトヨタ自動車など、弊社以上に長く中国に根を下ろして貢献してきた日本企業までもが狙い撃ちされたことに、強いショックを受けました。
特に、中国近代化に協力してくれたと尊敬されてきたパナソニック・グループまでが襲撃されたのは、想像を超えた動きでした。かつて、天安門近くにある北京歴史博物館の展示として日本人としては唯一、(パナソニックの創業者である)松下幸之助展が開催されるなど、中国にとって非常に近しく尊敬される企業なのです。また、青島といった過去にデモなんて起こったことがない観光地でも、政府が手が付けられないほどの暴動が起こって驚きました。