ルネサスが次々と海外企業を買収、懸念される「減損」リスクPhoto:PIXTA

半導体大手ルネサスエレクトロニクスは、英国の半導体メーカーであるダイアログ・セミコンダクターを買収する。各国当局の承認を経て8月末にも完了見込み。だが、今回の買収に関して、半導体や経済の専門家の見方は分かれるようだ。特に、買収のタイミングが微妙だ。ルネサスの買収は半導体市況が上昇する過程で決定された。そのため、高値づかみにならないか懸念する専門家は多い。市況の変化によってルネサスの事業体制が不安定化し、“のれん”の減損リスクが高まる可能性は否定できない。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)

買収を評価する声もある一方
「高値づかみ」にならないか懸念

 今年2月、半導体大手ルネサスエレクトロニクスは、英国の半導体メーカーであるダイアログ・セミコンダクターを買収すると発表した。買収額は6000億円を超えるもようで、各国当局の承認を経て8月末にも買収は完了の見込みだ。この買収によってルネサスは、電源管理などの半導体技術を取り込んで収益源を多角化し、より安定的に多くの収益を獲得する事業体制を目指している。

 今回の買収に関して、半導体や経済の専門家の見方は分かれるようだ。特に、買収のタイミングが微妙だ。ルネサスの買収は半導体市況が上昇する過程で決定された。そのため、高値づかみにならないか懸念する専門家は多い。8月中旬にサムスン電子など韓国の大手半導体メーカーの株価が大暴落したのは、世界の半導体市況が調整局面に入る可能性を示唆している。

 その一方で、同社の買収を評価する向きもある。中長期的に見ると、世界全体で民生分野を中心に半導体需要は拡大する可能性が高いからだ。短期的な需給の緩みなど事業環境のリスクに対応しつつ、買収によって新たに加わった企業を含めて組織を一つにまとめ、より効率的な事業運営体制を確立することがルネサスに求められる。