バイデン政権による“半導体サミット”では、米国がより多くの半導体の確保を急いでいることが明らかになった。日本の半導体企業が競争力を発揮するために、政府は本腰を入れて当該分野の強化をすべきだ。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
米バイデン政権が“半導体サミット”を開催
狙いは“Made in USA”の半導体生産能力の増強
4月12日、米バイデン政権が半導体など19社の企業幹部と意見交換する、いわゆる“半導体サミット”を行った。その一つの狙いは、ファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)などに対して、米国内での半導体生産能力を高めることで、海外企業・海外生産への依存度を引き下げることだ。
今回の“半導体サミット”の背景には、中国との対立の構図がある。共産党政権主導で中国は高い経済成長を実現し、軍事力を強化して国際世論への影響力を強めた。もし、中国が台湾を攻撃すれば米国の覇権は揺らぐ。そのリスクに対応するため、安全保障の面からも米国は“Made in USA”の半導体生産能力を増強する必要がある。
また、今回のサミットには、米国半導体産業への支援をより重視するバイデン政権の姿勢を示す狙いもあった。それは、バイデン大統領が、米国内の当該分野の企業に手厚い支援を行うと示したことからも明らかだ。現在、台湾は世界の半導体生産の64%を占め、韓国企業が17%を担っている。中国ファウンドリー産業も成長する中、米半導体企業の競争力がどうなるかは見通しづらい。
“半導体サミット”開催で明確になったことは、米国が米国産業を守るため、より多くの半導体の確保を急いでいることだ。それは、わが国の半導体関連企業が競争力を発揮するために、重要な追い風になる可能性がある。そうした企業の競争力向上に向けて、わが国政府は本腰を入れて当該分野の強化を目指すことが求められる。