株式公開買い付け(TOB)による三洋電機の子会社化を決めたパナソニックは、昨年末、三洋の大株主である金融3社とTOB価格131円で合意した。だが、三洋株価が高騰、現在はその約2倍だ。金融三社やその株主に不利となった合意価格が、TOB実現の障害にならないか。焦点は、ゴールドマン・サックスだ。

 パナソニックが三洋買収を正式表明した昨年末から、半年あまり経過した。ようやく、TOB実施計画のメドがつきつつある。

 両社はTOBの事前作業として、日本、米国、欧州など11ヵ国・地域において競争法の審査手続きを要請した。現時点で審査待ちの6ヵ国についても、早晩、ゴーサインが出る見込みとなり、「9月までにTOBを完了できる」(パナソニック幹部)公算となった。

 ところが、この競争法審査の長期化が、TOB関係者に思わぬ誤算をもたらした。この半年で、三洋の株価が急騰したのだ(下記グラフ参照)。

TOB価格の約2倍に上昇した

  6月30日の終値は250円であり、昨年末に、パナソニックが三洋の大株主である金融3社(米ゴールドマン・サックスグループ、大和証券SMBC、三井住友銀行)と合意したTOB価格131円の約2倍だ。

 三洋は2009年3月期決算で、932億円の最終赤字に転落した。いまだに半導体など不採算事業も抱えたままであり、リストラが進捗しているわけでもない。

 それにもかかわらず、株価が急騰した背景には、日本政府が景気刺激策の一環として、環境重視政策を掲げたことがある。三洋は主力事業として、環境対応車向けの二次電池や、太陽電池を抱えており、にわかに“環境銘柄”として脚光を浴びたのだ。

 さらに、5月末、三洋が金融機関6行と2000億円の協調融資契約を結び、資金繰りのリスクを回避できたことも、株価を押し上げた。パナソニックという後ろ楯があったからこそ可能になった資金調達だから、パナソニックにとっては痛しかゆしである。

 では、この株価高騰が、TOB実現の障害となるのか。

 パナソニックにすれば、買収金額を最小限に抑える子会社化──、すなわち、買い付け株式数が過半数(51%)を下限として、かつ、それを大きく上回らないようなTOBが最善である。