管理職として成長するための
「最高の習慣」とは?

 ただし、自分を振り返ることは重要です。

 失敗をしたから、問題が発生したから、自分を振り返るのではありません(そういうときに振り返るのは当たり前のことです)。目立った問題もなく、日々が平穏に過ぎていくときでも、日常的に自分を振り返る習慣こそが、管理職には求められているのです。

 その日の出来事を振り返り、「自分の対応は正しかったか?」「なぜ、自分はあのような反応をしたのか?」「あのとき、メンバーは何を思っていただろうか?」「改善すべきことはないか?」などと考える。いわば、「内観」をするわけです。

 こうして、自分の言動を客観的に見つめれば、何かしらの気づきは必ずあるものです。それを、日々繰り返すことによって、自分の言動に微修正を加え続けることが、管理職として成長するうえで決定的に重要だと思うのです。

 その点、私は少々恵まれていたかもしれません。

 というのは、書家というものは、「内観」しなければ書くことができないからです。

 何か文字を書くときに、それが作品として成立するためには、「なぜ、自分はこの言葉を書こうとしているのか?」ということを深く深く考えることが不可欠です。そして、その文字を書く意味を自分の内面でしっかりとつかんだときにはじめて、「どのような筆遣いで、どのような形で書くのか」が見えてきます。そうしたプロセスを経ずに、見る人を納得させる書を生み出すことは不可能なのです。

 このことに気づいたのは大学生のときでしたが、それ以降、私は、年がら年中、「なぜ、書くのか」「自分は何を表現したいのか」と自分と向き合ってきました。いわば、「内観」が習慣化していたのです。

 社会人になって、筆をもつ時間が減ってからも、「内観」の習慣は変わらず続きました。私の場合は、毎晩、風呂につかりながら「内観」するのが習慣で、そのときに、一日を振り返り、「自分のこと」「メンバーのこと」「チームのこと」などに思いを巡らせます。そして、なんらかの反省点を見出し、翌日の行動に結びつける。修正することを決意する。ほんの5分間ほどの習慣ですが、それを毎日毎日続けてきたのです。

 私は、この習慣にずいぶん助けられてきたと実感しています。

 ぜひ、みなさんにも日常生活のなかに取り入れていただきたいと願っています。

 最近、つくづく思うのですが、マネジメントには「これで完璧」という最終到達点などはありません。その意味で、「書道」や「柔道」「剣道」のように「道」を究め続ける、まさに「マネジメント道」のようなものだと思います。

 その「道」を究めていくためには、日々、自らを振り返り、修正を続ける「内観」の習慣が欠かせません。いや、マネジメントにはめざすべき「最終到達点」がないのですから、私たちにできるのは、日々修正を繰り返すことしかありません。その営みをコツコツと積み重ねることによってしか、管理職として成長していくことはできないと思うのです(詳しくは『課長2.0』をご参照ください)。