「仕事が楽しくない」部下を元気にするため、今日からできる地道な習慣組織や部下に「元気がない」と感じたら、上司はどうすべきか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は現在、プロダクトマネジメントやエンジニアリングマネジメントにも関わり、チームビルディングの支援なども行っている。その及川氏が、日本の企業や組織に見え隠れする「元気のなさ」を解消するために薦める、処方箋とは。

未来へ貪欲に夢を描くカンボジアの若者と
日本の若者の違いとは

 最近知人から「若手・中堅のオフィスワーカーに、自信や元気がなくなっているような気がする」という声を聞きました。社会や職場に対して何も期待することがなく、言われたことや決まったことには従わなければ仕方がない、と何事も諦めてしまっているのではないかというのです。

 理由としては「1990年代のバブル崩壊以降に物心がついて育った世代で、一度も経済成長を体験したことがなく、社会や景気が良くなるイメージがない」、あるいは「組織が時代の変化に追いついていないために、成功体験が得られていない」など、いくつかのことが考えられます。この話を聞いていて私が思い出したのは、以前カンボジアを訪れたときのことでした。

 カンボジアは2000年以降、リーマンショックによる不況の時期を除けば、高い経済成長率を維持しています。2020年は新型コロナウイルスの影響でマイナス成長となりましたが、2011〜19年までは年率約7%の成長を続けており、2021年もプラス成長が見込まれています。

 カンボジアはある意味、「ゼロからのスタート」を余儀なくされた国です。1970年に起きたクーデター以降、内戦が続き、1975年にポル・ポトの指導下で内戦に勝利したクメールルージュが政権を取ると、知識層が粛清の名目で大量に虐殺されました。ですから現在、カンボジアで経済成長を支える人たちの親世代は、ポル・ポト政権下では目立たないように下を向いて生きてきたか、政権側に付いて生き延びた人たちです。

 一方、私が現地で話した、大学でビジネスやITを学んでいる若い人たちは目が輝いていて、未来に対して貪欲にいろいろな夢を描いていました。政治的な腐敗や広がる貧富の格差など、今でも問題はあるものの、カンボジアでは人口が増え、経済が成長局面にあるため、「努力して能力を身に付ければお金が稼げる」という期待も彼らは持っています。