サントリーホールディングスの新浪剛史社長「45歳定年制」の導入を提言したサントリーホールディングスの新浪剛史社長(2019年6月撮影) Photo by Masato Kato

サントリーホールディングスの新浪剛史社長が、「45歳定年制」の導入について提言したことが波紋を呼んでいる。この発言のどこが「ダメだった」のか、考えてみよう。そして、定年制を巡る問題の本質的な解決には、別の提案の仕方があると考えているので、そのアイディアもお目にかけたい。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

新浪さん、「定年」という言葉はまずかった

 サントリーホールディングスの新浪剛史社長が、「45歳定年制」の導入を提言して波紋を呼んでいる。今回は、職業人生における「45歳」の周辺について考えてみたい。

 はじめに断っておくが、筆者は、新浪氏とかつて同じ会社で働いていたいわゆる「同期」であり、友人でもある。この事実は読者に隠さない。もちろん、だからといって、ここで彼のために一肌脱いで応援してやろうという趣旨で以下の文章を書くのではない。

 率直に言うと、今回は「定年」という言葉の使い方が決定的にまずかった。

 定年という言葉には、一律に年齢で区切って社員を辞めさせるイメージがつきまとう。そして、単にイメージだけでなく、現実に多くの会社にあって定年で雇用が打ち切られる。サラリーマンにとっては「期限を決められて職を失う時」が「定年」だ。

 ただでさえ「人生100年時代」と言われて、長寿化に伴って長く働かなければ生活が成り立たないと思っているところに、定年を45歳まで繰り上げられるとする。平均的なサラリーマンにとって、これは「とんでもない事態」だ。