アプリストアが成熟してきたからこその譲歩

 加えて、ゲームサブスクリプションサービスのApple Arcadeによって安定した利益を上げられる体制も整ってきた現在、アップルは余裕を持って一部アプリの手数料値下げやアプリの外部課金を認められる状態になったと考えられる。

 実際に、投資銀行モルガン・スタンレーのリサーチディレクターの分析によれば、アプリストアに関して上記のような規約変更が行われた場合でも、一部アプリの手数料値下げがアップルの利益に与える影響は1~2%程度、そしてリーダーアプリの外部課金を認めたとしてもアップルのサービス部門の収益の4%、全体収益の1%程度の減収にとどまるという。このため、同社のビジネスにはほとんどダメージはないと思ってよいだろう。

 こうしたことを踏まえて、アメリカの議会にはアップルの規約改定は不十分と考える向きもあり、今後、アプリストアやGoogleプレイストアに代表される課金プラットフォームの独占禁止のための法案可決に向けた動きが加速しそうだ。同様の法案は、すでに韓国の国会では可決されており、大統領の署名をもって正式に効力を発揮する。

 その意味では、アプリストアの手数料と課金システムを巡る攻防は、ようやく第1ラウンドを終えたところともいえよう。ただ、いずれにしてもユーザーの立場から見れば手数料の件はほぼ無関係であり、課金システムの多様化も、わざわざ外部サイトを使わずにアプリストア内で完結するならメリットしかない。消費者としては、今後とも落ち着いて事の成り行きを見守っていけば十分なのである。