ハーバードの知性「両利きの経営」増補改訂版で新たに取り上げられたAGC Photo:VCG/gettyimages

ハーバードビジネススクールのマイケル・L・タッシュマン名誉教授とスタンフォード大学経営大学院チャールズ・A・オライリー教授の共著『両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く』は日本でロングセラーとなっている。そうした中、今年9月、「両利きの経営」の増補改訂版が出版された。新たに加筆された箇所に込められた意図とは。また両利きの経営を成功させる上で重要なポイントは何か、詳しく聞いた。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

>>前編『ハーバードに集う一流リーダーが議論する「両利きの経営」の本質』から読む

「両利きの経営 第2版」で
加筆した三つのポイント

佐藤 今月7日、タッシュマン教授の著書「両利きの経営 第2版」(Lead and Disrupt: How to Solve the Innovator's Dilemma, Second Edition)がアメリカで出版されました。このコロナ禍で増補改訂版をあえて出版した動機は何ですか。

タッシュマン 2016年に「両利きの経営」を出版して以降、ハーバードビジネススクールのエグゼクティブ講座の受講生や読者から、「両利きの経営を実践していく上で企業文化はどのような役割を果たすのか」「新規事業をコア事業へと統合させていく過程ではどのような部署が何をやればよいのか」といった質問が相次ぎました。これらの質問に答えるべく、この5年間、共著者のチャールズ・オライリー教授と研究を進めてきました。その結果をまとめたのが、この増補改訂版です。

 本書はパンデミック前から書き始めたものですが、結果的にパンデミックで「両利きの経営」の重要性がさらに注目されるようになったと感じています。

次ページ以降では、増補改訂版で新たに加筆された三つのポイント、両利きの経営を実践する上で経営者が心得るべきことなどについて解説しています。