もし社員が辞めていくブラック企業で権力闘争が始まったら…
突然だが、ブラック企業のヒラ社員になったと想像していただきたい。
競合他社と比べて常軌を逸した低賃金・重労働なので、社員が次々と去っていく。そこで定期的に「アットホームな会社です」なんてデタラメ求人広告を出して、何も知らない若者を補充しているが、焼け石に水。辞めていく者の数の方が上回り、年を追うごとに社員数は減少している。
しかし、業務は年々増えている。現場の窮状を知らぬ経営層が、DXだのテレワークだのと次々と新しい取り組みをやれと号令をかけるせいで、現場の負担は雪だるま式に増えているのだ。
そんな絵に描いたようなブラック企業で、副社長、専務、現社長のジュニアなど幹部たち間で、新社長の座をめぐる権力闘争が始まった。彼らは自分の派閥の勢力を増すため、現場の社員たちへ猛烈な自己アピールをした。
ある者は、会社の若返りを訴えて高齢役員を一掃すると主張した。また、ある者は自分が社長になったらwithコロナ時代の働き方を推進、福利厚生を向上させると宣言した。そしてまたある者は、ライバル会社の脅威を強く訴えて、「会社を守り抜く」と叫んで、新規事業をグイグイ進めていくと鼻息が荒い。
さて、そんな次期社長候補たちを見て、ヒラ社員のあなたはどう思うだろうか。きっと心の中でこんな風に叫ぶ方も多いのではないか。
「いやいや、そんなピントのズレた議論をしていないで、まずは社員がどんどん減っているこの危機的状況をどうにかしろよ!」
……なぜこんなお話をさせていただいたかというと、実質的な「日本のリーダー」を選ぶ自民党総裁選でこれと同じ現象が起きているからだ。
コロナ対策だ、党改革だ、原発だ、敵基地攻撃能力だと多種多様な論戦がおこなわれているのは結構なことだが、日本衰退の根本的な原因である「人口減少」がちっとも争点となっていない。世界から見ても、かなりお気楽すぎるのだ。